2006 Fiscal Year Annual Research Report
オリゴチエノキノイド分子を用いる純有機単一成分伝導体の開発
Project/Area Number |
18350024
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
瀧宮 和男 広島大学, 大学院工学研究科, 助教授 (40263735)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮碕 栄吾 広島大学, 大学院工学研究科, 助手 (00432683)
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Keywords | キノイド構造 / 単一成分有機伝導体 / 拡張π電子系 / オリゴマー / 電子受容体 / バンドギャップ / 有機電界効果トランジスタ / n型材料 |
Research Abstract |
シクロペンタン縮環型の高溶解性オリゴチエノキノイド分子の特性を活かしつつ,置換基の嵩高さ(立体障害)を低減する試みを以下の二つのアプローチで行なった. 1.ブトキシメチル基からメチル基への変更:従来のブトキシメチル基をメチル基に変更するために,中間体であるヒドロキシメチル基のメチル基への還元を種々試み,高収率で変換できる方法を見出した.開発に成功したメチル誘導体を順次多量化し,最高で六量体までの鎖長伸長に成功した.さらにこれらの化合物の末端α位をハロゲン化し,ジシアノメチル基の導入と酸化(キノイド化)を行い,最高で五量体までの合成に成功した.しかし,四量体,五量体では溶解性が著しく低下し,合成,精製が相当困難となり収率も低下した.一方,三量体の単結晶X線構造解析に成功し,結晶中では結晶溶媒を含むものの分子間相互作用が認められ,置換基の嵩高さ低減の効果が認められた.さらに,微結晶(粉末)試料を加圧成型したペレットを用いて測定した伝導度は,対応するブトキシメチル置換体と比較して数桁の伝導度向上が認められただけでなく,鎖長の伸長に伴い伝導性も向上し,五量体において10^<-5> Scm^<-1>に達することが明らかとなった.現在,データの再現性確認とESR測定などを検討している. 2.ハイブリッド型誘導体の検討:アルコキシメチル基を持つシクロペンタン縮環チオフェンと無置換チオフェンを組み合わせたハイブリッド型誘導体の合成と物性の検討を,三量体を中心に行なった.その結果,ハイブリッド三量体は高い溶解性を保持しており,またブトキシメチル置換体の単結晶X線構造解析の結果,相互作用が回復できていることも明らかとなった.微結晶(粉末)試料を加圧成型したペレットを用いて測定した伝導度も大きく向上しており,このアプローチが有効であることが確認できた.さらに,高い溶解性を利用して,スピンコート法により作製した薄膜をチャネル層としたn型有機FETを試作した.その結果,素子の最適化により高い移動度(最高で0.2cm^2/Vs程度)をもつ溶液プロセス可能なn型有機半導体材料となりうることも明らかとなった.
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