Research Abstract |
本研究は,「脱塩基部位(AP site)を結合部位として有する低分子結合性DNA(アプタマー)の開発」を目的とする。具体的には,生体代謝物質や薬理活性物質等を標的基質とするもので,これらの標的化合物を脱塩基部位に対面するレセプター塩基が水素結合形成により選択的に捕捉する。昨年度までに,AP site含有DNA二重鎖がリボフラビンに対する優れたアプタマーとレて機能することを見出し,また,蛍光マーカーを利用する競合アッセイ系を構築することで,テオフィリン(気管支喘息の治療薬)を標的基質とするアプタマーを開発することに成功した。本年度は,AP site含有DNA二重鎖とフラビン誘導体等との相互作用解析を進めるとともに,新たにカフェインやアデノシン,テオフィリンを標的基質とするアプタマー開発を達成した。 カフェインアプタマー(解離定数:20μM)は,チミン塩基をレセプターとするAP site含有DNA二重鎖で,リボフラビンを蛍,光マーカーとレて利用することで,カフェインの簡便な蛍光検出が可能となる。また,アデノシンアプタマーの場合,蛍光マーカーとしてナフチリジン誘導体を利用しており,10μM〜150μMのATPを高選択的に検出することができる。 一方,新たに開発したテオフィリンアプタマー(解離定数:10μM)は,2-アミノプリンをレポーター塩基とする蛍光性のAP site含有DNA二重鎖(レセプター塩基:シトシン)で,蛍光マーカーが不要となることから,より簡便なアッセイが可能となる。 以上のように、本研究では、AP site含有DNA二重鎖が優れたアプタマーとして機能することを明らかにした。既存のアプタマーはRNAをベースとするものが主流で,優れた結合親和力と選択性を発現することが報告されているが,化学的に不安定であることがRNAアプタマーの本質的な問題である。これに対し,本研究ではDNA二重鎖中に設けたAP siteを結合サイトとして利用することで,充分な結合選択性と明瞭な蛍光シグナルを発現しうるセンシング機能と化学的安定性を兼ね備えたアプタマー開発を達成した。
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