2008 Fiscal Year Annual Research Report
生体高分子系ナノ組織体の超分子不斉光化学機能材料への展開
Project/Area Number |
18350064
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
和田 健彦 Tohoku University, 多元物質科学研究所, 教授 (20220957)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 直 大阪大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (70311769)
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Keywords | 生体高分子 / ヒト血清アルブミン / 光反応 / 超分子不斉光化学反応 / アントラセン / ナノ組織体 / 不斉反応場 / 不斉合成 |
Research Abstract |
我々はこれまでに薬物などの様々な疎水性化合物を取り込むことが可能なキラルな結合サイトを有するヒト血清アルブミン(HSA)を不斉反応場して利用した2一アントラセンカルボン酸(AC)の不斉光環化二量化反応を検討し、最適化した系において、80%以上のエナンチオマー過剰率(ee)を達成した。しかし、詳細な反応機構の解明は十分行えていない状況であった。このような背景を踏まえ今年度は、これまでにHSAの各結合サイトに特異的に結合することが知られている化合物を拮抗阻害剤として利用し、結合挙動情報と光反応結果を比較することで、詳細な反応機構について検討した。各種分光手法により、HSAはACに対して5つの独立した結合サイトを有することを明らかにした。結合阻害剤には、すでに結合挙動が明らかにされているヨード安息香酸(IB)、ジフルニサル(DIF)を用いた。阻害剤存在下におけるAC-HSA系のCDスペクトル滴定により、IBはHSAの第1サイト、DIFは第1〜3サイトを拮抗的に阻害する,ことを示す結果を得た。この知見をもとに、阻害剤存在下におけるACの光反応を行ったところ、IBがACに対して5当量の時、生成物比はAC/HSA=3の時とほぼ同じ結果を示したが、eeは2、3共に減少した。一方、AC/HSA=5において、DIF40当量添加時と非添加時を比較したところ、生成比はHH体優先で得られ、2のeeは大幅に減少すると共に、3のeeはほとんど0まで低下した。以上の結果から、1)第4サイト以降は第3サイトと比較して低いエナンチオ選択性であること、2)DIFが第3サイトまでを緩やかに阻害し、第4サイトではHH体を生成すること、3)2はどのサイトでも(+)体を与えること、4)第4サイトで得られる3は第3サイトで得られるもののアンチポードであり、そのeeは低いことが明らかになった。
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