2006 Fiscal Year Annual Research Report
有機磁性体におけるナノスケールスピン構造の制御と特異な磁性発現
Project/Area Number |
18350076
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
細越 裕子 大阪府立大学, 理学系研究科, 助教授 (50290903)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西原 禎文 大阪府立大学, 理学系研究科, 助手 (00405341)
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Keywords | 磁性 / 分子性固体 / 有機ラジカル / 量子効果 / 分子磁性 / 低次元磁性 / ナノクラスター |
Research Abstract |
本研究は、分子内に複数のラジカル基を有する有機ポリラジカルの分子内磁気相互作用を高度に制御することで、種々のスピンサイズを持っナノスケールスピンクラスターを合成し、新奇な量子現象の発現を目指すものである。本年度は、新規環状3スピン系化合物4種類の合成に成功した。ニトロニルニトロキシドとイミノニトロキシドの組み合わせにより、得られる2種類の正三角形、2種類の二等辺三角形スピンについて静磁化率測定を行い、磁気相互作用がラジカル基に応じて変化することを見出した。また、ニトロキシドとイミノニトロキシドの組み合わせによる二量体および環状4スピン系物質についても開発を進めた。二量体分子は結晶格子が大きいために構造解析に成功していないが、磁気測定の結果、分子間で複数の二量体分子が連結された大きなスピンクラスターの形成が示唆された。一方、2つのS=1/2が分子内強磁性相互作用2J/k=407Kで結ばれたビラジカルF2PNNNOは、結晶中で、最近接分子間にニトロキシド基の接近を生じ、二分子が2J/k=-67Kの反強磁性相互作用で結ばれる。この物質の大型単結晶を育成し、偏極中性子回折実験を行った。強い分子間反強磁性相互作用で結ばれたニトロキシド基は、もう一方のニトロニルニトロキシド基に比べ、第一励起状態においてスピン密度が著しく小さいことが明らかとなった。これは量子効果によるスピンの消失を直接観測した成功例であり、意義深い。
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