Research Abstract |
カーボン膜被覆されたSi,金属,プラスチック等のカーボン材料にAr^+イオン照射を行うと,カーボン表面に高密度の円錐状突起が形成され,更にその突起先端に単一(即ち,各先端に一本だけ)カーボンナノファイバー(CNF)が室温で成長する。本研究は,このイオン誘起CNFを用いた,従来の常識を覆す,「超高真空を必要としない大型、長寿命、フレキシブル(折り曲げ可能)な電界電子放射型ディスプレイの開発」を目標に実施している。本年度の具体的成果は以下の通りである。1)最適自己再生条件の決定:試作した装置の性能チェックを兼ね,グラファイト基板上にCNFを室温合成し,CNFサイズ(太さ,長さ),密度,結晶性についての評価を行った。サイズ,密度とも狙い通りのものが得られ,透過電子顕微鏡による観察の結果,結晶性は非晶質様であった。典型的な条件で合成されたCNF群について,実用真空下(10^<-4>Pa),高真空下(10^<-6>Pa)での電子放射特性評価,寿命試験の結果,高真空下の試験でも電子放射によるCNFサイズ,密度の変化が確認された。また,プラスチック基板上に合成されたCNF群を用いて,真空中で動作するフレキシブルディスプレイを試作し,基板を湾曲させた状態でもディスプレイ動作が可能であることを実証した。 2)最適CNF合成イオン種の決定:従来から使用してきたAr^+イオンがCNF成長の最適イオン種であるとする根拠はない。グラファイト上に種々のイオン種でCNF合成を行い,CNFサイズ,密度の比較を行った結果,軽イオン,高エネルギー照射によって,サイズ,密度ともに高いCNF群が形成されることが初めて明らかにされた。 3)最適イオン入射角の決定:種々のイオン入射角でグラファイト上へのCNF合成実験を行った結果,斜入射で良好なサイズ,密度のCNF群が形成されることが明らかにされた。 4)巻き取り機構(試料ステージ)の設計・試作:プラスチック基板用巻き取り機構の設計を行い,試作機を完成させた。
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