Research Abstract |
本研究の目的は, 超高サイクル疲労の原因である内部起点型破壊において, き裂の初期伝播過程で生じる微細な凹凸状破面(粒状破面)の形成機構を明らかにすることにある. 「粒状破面は気体成分の吸着が著しく少ない内部き裂の伝播過程において, き裂新生面が長期間繰返し接触をすることで形成される」という仮説を提案し, その検証を試みた. 本年度は, 平成18年度に開発した超高真空疲労試験機を用いて, Ti-6Al-4VおよびSNCM439の△K漸減き裂伝播試験を行った. 真空圧力は大気, 中真空(1.6×10^<-1>Pa), 高真空(2.7×10^<-5>Pa), 超高真空(1.6〜4.0×10^<-7>Pa)とした. 試験後, 電子顕微鏡による破面観察を行い, 粒状破面の形成に及ぼす真空圧力および破面接触の影響を調べた. Ti-6Al-4Vの結果から, 大気から超高真空に至るまで, 真空圧力の低下に伴いき裂伝播速度が低下することが明らかとなった. 粒状破面は大気・中真空中では認められず, 高真空・超高真空において, 繰返し破面接触(き裂閉口)が長期間生じる箇所にのみ形成された. これらの粒状破面は内部起点型破壊で観察される粒状破面と酷似していた. SNCM439の結果においても, 類似の粒状破面が高真空かつ繰返し破面接触の生じる条件で観察されることがわかった. 気体分子によるき裂新生面の被覆率を計算したところ, 大気・中真空では100%であるのに対し, 高真空・超高真空では20〜0%となり, 粒状領域の形成には気体分子の吸着による破面の保護作用が乏しいことが必要であると示唆された. 以上から, 内部き裂の伝播過程で生じる粒状破面は, 高真空以下の低真空圧力下で, 破面接触が長期間繰返されることによって生じるものであり, Ti合金や高強度鋼などの材質によらないことが明らかにされた. すなわち, 冒頭の仮説の妥当性が示された.
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