Research Abstract |
平成18年度は,完全相似性が成立する粗面乱流境界層において,1.粗さ要素近傍場のLDV計測手法の確立,ならびに2.普遍法則の検討において重要な事柄の1つである高さ方向原点位置の決定を念頭に研究を遂行した. 粗さ要素近傍場においてLDVによる速度統計量を計測するために行った主な工夫を以下に示す. 1.粗面壁近傍領域まで計測を行うために,LDVプローブを傾斜して計測する手法の開発,確認 プローブ傾斜角度αは,瞬時速度ベクトル場と幾何学的配置形状の関係から評価し,α=4°と決定(α=4°のとき,速度統計量に対し,2%以下の影響) 2.バイアス誤差を減少させる方法として,粗面壁面からトレーサー粒子を噴霧状に噴出する形式 壁面からの噴霧流量は,流出口を粗さとみなして運動量積分方程式から壁面せん断応力に対する影響を評価し,それが小さく(3%)なるように決定. これらの工夫により,粗さ要素近傍場において速度統計量分布の計測が可能となった.計測値の妥当性については,粗さ要素に作用する抗力が粗さ要素間溝部開口面における平均流ならびに乱流による運動量流束の和に等しいことを利用して,浮動片要素応力直接測定装置によって得られた抗力値と比較して検討した.その結果,速度統計量から評価された抗力値が,直接測定装置により得られた値に比べ約50%程度過大評価された.この要因として,壁面の噴霧孔からの噴出速度が0.25m/sと局所的に大きかったこと,ならびに粒子密度の最適化に不備がありデータレートが低かったことが挙げられ,次年度以降の課題(噴霧速度,噴霧範囲やトレーサー粒子の変更)として残された. 高さ方向原点は,粗さ要素各面の表面圧力分布を計測し,粗さ要素に働く抗力の作用点位置とする試みを行った.抗力の作用点は,粗さ要素頂上面位置を基点とした抗力のモーメントから評価した.その結果,抗力の作用点を高さ方向原点とした場合,平均速度分布に対数関数で近似される領域が存在することを実験的に示した.また,粗さ要素頂上面から測った抗力の作用点までの距離は,原点補正量と良好に一致することが分かった.
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