2006 Fiscal Year Annual Research Report
生体組織の凍結損傷に及ぼす細胞レベルの熱物質移動の影響
Project/Area Number |
18360104
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高松 洋 九州大学, 大学院工学研究院, 教授 (20179550)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
住本 英樹 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (30179303)
吉田 敬介 九州大学, 大学院工学研究院, 助教授 (60191582)
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Keywords | 低温生物学 / 凍結保存 / 冷凍 / 細胞・組織 / 凍結損傷 / 三次元観察 / 細胞膜 / 浸透圧 |
Research Abstract |
生体組織や臓器および人工臓器の凍結保存実現のためには,組織を構成する細胞の凍結損傷機序の解明が重要である.本研究はこれに関して,細胞の培養状態と形態の違いが細胞損傷に与える影響を明らかにすることを主な目的としたものである.本年度は,ヒト前立腺癌細胞株PC-3を試料とし,以下の二種類の実験を行った. 1.凍結実験 この実験では,低温顕微鏡を用いて細胞の凍結解凍後の生存率を測定した.浮遊細胞,PLLコートガラスおよびコラーゲンコートガラスにそれぞれ20時間培養した細胞を試料として凍結解凍実験を行った.その結果,以下のことが明らかになった. (1)浮遊細胞,接着細胞にかかわらず,凍結解凍後の生存率は凍結温度が-10℃より-20℃の場合のほうが著しく低く,また,生存率は冷却速度の増加とともに低下した. (2)PLLコート上の細胞の生存率は浮遊細胞と同程度あるいはやや低い程度であったが,コラーゲンコート上の培養細胞の生存率は,それより著しく低下した. 2.濃度変化実験による細胞の三次元実時間観察 この実験では,レーザスキャナを搭載した溶液灌流顕微鏡を用い,細胞膜を蛍光染色した浮遊細胞を試料として,周囲溶液のNaCl濃度の上昇に対する細胞の形態変化を観察した.得られた画像から三次元構築した立体像を元に,画像処理を行って細胞の体積と表面積を求めた.そして,細胞の膜透過に対するモデル解析により細胞膜の水透過率の計算を行った.結果は以下のとおりである. (1)水の透過率の測定値は,体積を三次元的に求めた場合と,二次元投影面積から球近似で求めた場合とでほとんど差がなかった. (2)10個の細胞に対して求めた細胞膜の水透過率は7.1x10^<-14>m/Pa/sであり,透過顕微鏡で求めた以前の結果とほぼ一致した.現在は,培養細胞を試料とした実験を遂行中である.
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Research Products
(2 results)