2007 Fiscal Year Annual Research Report
生体組織の凍結損傷に及ぼす細胞レベルの熱物質移動の影響
Project/Area Number |
18360104
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高松 洋 Kyushu University, 大学院・工学研究院, 教授 (20179550)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
住本 英樹 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (30179303)
吉田 敬介 九州大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (60191582)
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Keywords | 低温生物学 / 凍結保存 / 冷凍 / 細胞・組織 / 凍結損傷 / 三次元観察 / 細胞膜 / 浸透圧 |
Research Abstract |
生体組織や臓器および人工臓器の凍結保存実現のためには、組織を構成する細胞の凍結損傷機序の解明が重要である、本研究はこれに関して、細胞の培養状態と形態の違いが細胞損傷に与える影響を明らかにすることを主な目的としたものである。本年度は、ヒト前立腺癌細胞PC-3を単離してNaCl水溶液中に懸濁浮遊した状態の細胞とコラーゲンコートしたガラス面上に付着伸展した培養細胞の二つを試料として、凍結損傷に大きな影響を及ぼす細胞の脱水特性に関する実験を行った。実験では、毎秒30枚の断層像を取得できるレーザスキャナを搭載した溶液灌流顕微鏡を用い、細胞膜を蛍光染色した細胞を試料として、周囲溶液のNaCl濃度の上昇に対する細胞の形態変化を観察した、得られた画像から三次元構築した立体像を元に画像処理を行って細胞の体積と表面積を求めた。そして、細胞の膜透過に対するモデル解析により細胞膜の水透過率の計算を行った。主な結果は以下のとおりである。 1.浮遊細胞はほぼ等方的に収縮するが収縮後のほうが球形からの歪は大きくなった。一方、付着細胞の場合には、付着面積は一定のまま細胞の高さだけが減少した。 2.浮遊細胞ど付着細胞では見かけの細胞膜の水透過率はほぼ等しく、培養細胞の中に発達した細胞骨格が水透過速度に及ぼす影響は見られなかった。 3.浮遊細胞の表面積は、球の場合より20%程度大きかった。一方、付着細胞の水透過に寄与する細胞膜の表面積は浮遊細胞よりわずかに小さい程度であった。 4.上記の結果を用いたシミュレーションによると、凍結過程で生ずる細胞内過冷度は浮遊細胞と付着細胞ではほぼ等しく、細胞内凍結の可能性は同程度であると考えられる。
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Research Products
(2 results)