2006 Fiscal Year Annual Research Report
巨大交換磁気異方性のメカニズム解明と高性能マンガン基反強磁性材料の開発
Project/Area Number |
18360144
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
角田 匡清 東北大学, 大学院工学研究科, 助教授 (80250702)
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Keywords | 交換磁気異方性 / スピンエレクトロニクス / ハードディスク / MRAM / 磁気異方性 / XMCD / 反強磁性 |
Research Abstract |
強磁性/反強磁性積層膜で観測される交換磁気異方性は、強磁性体のスピンが一方向に固着される現象であり、磁気ランダムアクセスメモリを始めとするスピントロニクスデバイスや超高密度磁気記録用スピンバルブヘッド等に実用化されている。本研究の目的は、近年我々のグループで導出に成功した巨大交換磁気異方性(J_K=1.3erg/cm^2)の発現機構の解明を通じて、交換磁気異方性の機構解明とそれに基づいた高性能材料開発を行うことであり、1.積層膜の微細構造と交換磁気異方性との相関の明確化、2.軟X線磁気円二色性元素選択性磁化測定による反強磁性層のスピン構造ならびに磁化過程の解明、3.交換結合膜のミクロスコピック解析モデルの構築と高性能交換結合膜材料の理論設計、4.理論設計された実用交換結合膜材料の作製と実証、を行う。本年度は下記の成果を得た。 軟X線磁気円二色性(XMCD)元素選択性磁気ヒステリシス(ESMH)評価により、積層膜中での反強磁性層のスピン構造ならびにその磁化過程の解明を行った。XMCD-ESMH実験のキーポイントは、微弱なMnのMCD信号のS/N比の向上にあるため、S/N比向上のための具体的方策として、印加磁界による外乱を本質的に受けずに高S/N比のMCD信号が期待できる透過法を採用した。透過法によるMn-Ir/Co-Fe積層膜のMnならびにCoの吸収スペクトルの磁気円二色性計測から、2ML以下の積層界面において反強磁性スピンの非補償成分が発生していることが明らかとなった。同非補償スピンはハイゼンベルグモデル計算においても確認された。また、交換異方性の大きさが異なる2種類のMn-Ir/Co-Fe積層膜について非補償反強磁性スピンのESMH計測を行ったが、両者に顕著な差は見られず、固着した非補償スピンが交換異方性の原因とする従来の理解では不充分であることを明らかにした。
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