Research Abstract |
本年度に行った研究を要約すると次のようになる. 1.多相PSK変調に基づく符号化特性の解析 多相PSK変調に基づく多元符号化を行い,かつ最適な量子一括復号を施した場合の,相互情報量の特性について,昨年度よりも元数の多い7相PSKまでのデータを蓄積した.その結果,広い範囲で符号化なし最大相互情報量を上回る量子利得が得られることがわかった.今後,さらに大きな量子利得を得る符号化を明らかにする必要がある. 2.ブロック符号を用いた量子符号化変調の検討 古典情報理論における,ブロック符号を用いた符号化変調のやり方を,そのまま量子符号化変調に応用することを検討した.量子利得を得るために一括復号としてSRMを用いたが,符号化は2元線形符号化という理想的な対称性を有するものであっても,多元符号としての対称性は保証されず,したがって,SRMの最適性が保証されない,あるいは通信路行列公式を適用できないという問題が生じた.このため,今後,多元符号として対称性を有するように符号化変調を検討するべきであるという方向性が明らかとなった. 3.量子信頼性関数による多元符号化の復号誤り率の収束特性の解析 昨年度,符号長無限の極限に対応する量子通信路容量の特性を明らかにしたが,符号長無限の極限ではなく,現実的な有限の符号長でのパフォーマンスを調べるため,量子ガウス通信路の量子信頼性関数と,2,4,8,16相PSK,16値QAM変調に対する量子信頼性関数を比較した.その結果,量子通信路容量の特性に類似し,平均光子数が小さいときは,16元程度までの変調で,連続変調の結果とほぼ等しいパフォーマンスが得られることがわかった.
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