Research Abstract |
本年度の研究では,(1)温度がコンクリート中での物質拡散速度や鉄筋腐食速度に及ぼす影響を実験的に明らかとすること,(2)上記(1)の結果に対しアレニウス則を適用し,見かけの活性化エネルギーを算出することにより,温度がコンクリート中での物質拡散速度や鉄筋腐食速度に及ぼす影響を定量的に明らかとすること,を主目的とし検討を行った.その結果,以下の結果が得られた. 1.コンクリート中での腐食要因物質の移動は対象とする物質の種類により異なる温度依存性を有し,アレニウス則より得られる見かけの活性化エネルギーも異なる. 2.コンクリート中での鉄筋のマクロセルおよびミクロセル腐食速度は異なる温度依存性を有する.特に,マクロセル腐食速度の活性化エネルギーはコンクリートの比抵抗に伴い変化するが,ミクロセル腐食速度のそれはコンクリートの比抵抗に関わらずほぼ同程度となる. 3.コンクリート中の鉄筋の腐食速度が酸素透過速度により律速されている場合,腐食速度と酸素透過速度の活性化エネルギーは同程度となる. 4.コンクリート中の鉄筋の腐食には,塩化物イオン量のみならず,鉄筋周囲に形成される境界相(ITZ)が大きな影響を及ぼす. 5.コンクリート構造物に散見される打継目に関して,鉄筋の腐食状況は,暴露環境,および,暴露期間により異なる.干満部では,暴露3ヶ月では,打継目の鉄筋に若干点錆が認められる.暴露5年,10年では,打継目のみの腐食,打継目から後打ちコンクリートにかけての腐食が最も速い.暴露25年では,鉄筋全面が腐食する場合が最も多い.陸上部では,暴露5,10,25年とも,打継目のみの腐食が最も多い.海中部では,暴露10年では,鉄筋全面に点状の錆が発生する時期が最も速い.
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