Research Abstract |
本研究の目的は土壌内におけるガスおよび溶質の拡散と移流に関するトランスポート・パラメータを実測し,そのモデル化を行うことにある。 本年度は,昨年度に引き続き,国内外の試料採取サイト(デンマーク(研究協力者:Moldrup),アメリカ(研究協力者:Rolston)を対象に,土壌ガスのトランスポート・パラメータ(ガス拡散係数と通気係数)の実測を行うとともに,構造異方性のある粘士,泥炭土についてのトランスポート・パラメータ測定,原位置通気係数測定を開始した。現場(北海道美唄(研究分担者:長谷川))での土壌ガス濃度分布(メタン,亜酸化窒素)測定も継続して行っている。本年度に得られた主な研究成果は次の通りである。 1.黒ボク土のトランスポート・パラメータの実測とモデル化 団粒構造を有する黒ボク土を対象た,ガス拡散係数と通気係数を測定し,牧草地におけるトランスポー卜、パラメータの空間変動性(Resurreccion et. al.,Soil Sci.,2007a)および林地たおける有機物含有量がトランスポート・パラメータに及ぼす影響を明らかにした(Resurreccion et al.,Soil Sci.,2007b)。溶質拡散については,これまでに報告例の少ない黒ボク土の拡散係数を測定した結果,試料の団粒構造および間隙構造の違いが溶質拡散係数に強く影響をえることが明らかになった。また,土壌特性(粘土,有機物含有量)と土壌構造(間隙径分布)を考慮した新しい拡散係数の予測モデルを提案した(Moldrup et al.,Soil Sci.,2007)。 2.構造異方性土壌におけるガス挙動の測定構造異方性のある粘土,泥炭土についてのトランスポート・パラメータ測定を行った。泥炭土については,水平方向のガス拡散係数と通気係数が鉛直方向に比べて約2〜5倍大きくなるこ乏が明らかとなり,脱水収縮にともなうトランスポート・パラメータの変化を植物遺体内部・外部の間隙構造変化に基づき説明できることを示した。
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