Research Abstract |
日本国内およびアジア域の貯水池の中には,土砂の堆積によって有効貯水容量が減少し,ダム本来の機能を発揮することができなくなる可能性があるものがいくつかある.一方で,貯水池や湖沼などでは土砂に含有する有機物質が嫌気性環境下において腐敗し,止水域の環境を悪化させるという事態も起こっている.また,沖縄などの亜熱帯・熱帯海域では珊瑚礁が赤土流出によって被害を受けている.そのような背景のもと,本研究では,流入土砂量の他に礫種構成比,X線回折法を用いた細粒土砂の鉱物構成比,細粒土砂の粒径分布,水・土砂・含有有機物の安定同位体比を用いた土砂生産源の追跡方法を開発してきた.また,微地形,土地利用状況,雨滴衝撃エネルギー,風雨の影響を考慮して新たな2つのタイプの土砂生産モデルを開発した. まず,比較的大きな粒径の礫種構成比を用いた土砂生産源の把握,X線回折法による鉱物構成比を用いた土砂生産源の把握,土砂に含まれる水および物質の同位体分析による土砂生産源の把握の開発を行った.その際の研究対象地域を富士川全流域,インドネシア・ブランタス川,ネパール・シワリックヒルとした.さらに,沖縄においては種々の雨滴計と既存の最先端偏波ドップラーレーダーを用いて詳細な雨滴衝撃エネルギーが赤土流出に与えているエネルギーを調査した. 一方,流域総合土砂追跡モデルの開発では,側岸浸食や氾濫の効果も入れたモデルを開発し,メコン川流域を対象にして数値実験による土砂追跡を行うことができるようになった.計算に必要な河道条件などは現地調査を行い,研究結果の整合性を検証した.また,畑地からの面源土砂流出を推定することができるモデルも開発した.このモデルを検証した結果若干過大評価の傾向はあったが,観測結果との比較においてR2値で0.6-0.8程度とよい相関関係を得ることができた.
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