2006 Fiscal Year Annual Research Report
住宅と施設の建築的補完性に関する研究〜制度と技術の変化が生み出す新しい施設の形
Project/Area Number |
18360283
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長澤 泰 東京大学, 大学院工学系研究科, 教授 (30217989)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 和彦 東京大学, 大学院工学系研究科, 助手 (40361521)
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Keywords | 住宅 / 施設 / 制度 / 地域 / 生活 |
Research Abstract |
本年度は文献調査と実地調査を並行して行った。文献調査は特に病院の病棟を中心に行い、住宅的な療養所から病院という施設に療養空間が移行するにあたって、病室がどのように形づくられてきたのか変遷をたどった。これまでは西洋文明の輸入と共に日本に紹介されたナイチンゲール病棟(大部屋)が素直に日本に受け入れられ、現在の6床あるいは4床という日本の病院で一般的な多床室へ受け継がれていると考えられてきたが、驚くべきことに当時の日本人はナイチンゲール病棟を全く受け入れず、個室を望んだという文献が発見された。病院のみならず高齢者施設でも「農耕的・大家族的な日本の文化として多床室に抵抗がない」といった理由で多床室が肯定されてきたが、実際にはそのような事実はなかったことがうかがえる結果である。 実地調査は、まだ介護が必要でない段階から高齢者が集団生活を行う「グループリビング」を先進的事例として行った。入居者はそれぞれの個室の他に共有スペースとして全員が利用できるリビングを持っているが、いつ誰とどのように使うことでプライバシーとパブリックをひとつの建物で使い分けているのかを考察した。多くの入居者は個室で過ごす時間を中心に生活を組み立てており、改めて個室の重要性が認識された。 同じく家庭的な雰囲気を重視する児童自立支援施設でも実地調査を行い、「家庭」という理想を実現するために建築的ハードをどのようにしてつくるのか、またギャップをどのように解消するのかといった工夫を各施設で調査した。子供が大きくなるにつれて個室が増えてくるが、共有スペースでの子供との交わりが生活の中心となるため、個室で時間を過ごすことを望む子供と管理者との葛藤がうかがえた。
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Research Products
(4 results)