Research Abstract |
今年度は,大阪府に実在する超高層集合住宅の個別住戸を対象に,竣工後の地震被害のリスクを評価する格付け指標とすることを目的として,地震被害の可能性を評価するモデルを作成した。今後30年で大阪府での発生確率と発生時の影響が大きいとされる5つの地震をシナリオ地震として定義し,それらの地震による集合住宅の個別住戸に対する,地震被害のリスクの算定方法を考えた。そして,実在する超高層集合住宅の個別住戸が保有する地震被害リスクを算定するケーススタディを行った。最後に,作成した評価指標の活用方法を記述した。これまで,住宅購入者は立地の利便性,住戸の面積,階数等の限定的な指標のみで超高層集合住宅の価値を算定し,それと販売価格との均衡を評価して住宅購入を決定するしかなかった。物件広告等では立地の危険度を開示せずに,建築物へのリスク対策等を強調することで,実際は危険な立地にもかかわらず安全な物件であるかのような誤解を与えるものもある。この指標を用いれば,住宅購入者は物件が保有する地震リスク情報を容易に評価に加味することができるようになる。この地震リスク評価指標は,住宅購入者に向けた格付け指標として提供できよう。一方,開発事業者にとっても,企画段階において,購入する土地の危険度算定や,建築物にどの程度の地震リスク対策を打つかという意思決定支援に用いることができる。つまり,これから土地を購入し,設計者を選定するような段階にある集合住宅について,一定の地震対策予算内で,その集合住宅が保有する地震被害リスクを最も低減させうる対策を選定し,適切な建築企画を策定するために,この指標を活用できる。
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