Research Abstract |
電子線励起X線ホログラフィーに関する予備実験として,市販の走査電子顕微鏡(JSM-6500F)と半導体検出器(EX-2300BU)を用いて,6keVの加速電圧条件下で,SrTiO3(Nbドープ)単結晶から放出される特性X線(SrLα,TiKα,OKα)の強度の角度変化を測定した.そのデータがホログラムを仮定した理論的な計算と一致し,かつ,フーリエ変換により,若干ぼやけてはいるが,Sr及びTiの原子像を再生できることを示した.この結果は,初めて電子線励起X線ホログラフィーの原理が正しいことを世に証明した成果である.また,得られた原子像の不明瞭さは,走査する角度範囲が狭いことや,単一波長の電子線でのみホログラムを記録していることに起因していることを理論計算的に示し,将来的には専用の装置を開発し,より良い測定条件でホログラムを記録することにより改善できることが分かった.また,従来のフーリエ変換と異なるフィッティングベースの原子像再生アルゴリズムを開発しており、これを用いれば多波長のホログラム測定を行わなくとも,精度よく原子像を再生できることが分かった. 次に,より大電流の電子ビームを利用できる走査型電子顕微鏡(S-4300)をべ一スに,5軸ステージ及び半導体検出器を組み込むことにより,電子線励起X線ホログラフィーの専用装置の設計・開発を行った.5軸ステージ及び半導体検出器を,Visual Basicを用いてPCにより制御することが可能となった.また,検出器の受光面には余計な二次電子やX線が入らないよう,コリメーターの部分の設計も行った.このコリメーター部分には,軟X線を除去するためのアルミ箔や,二次電子の進行方向を曲げるための磁石を組み込めるよう設計している.また,試料ステージは,測定中表面に付着するハイドロカーボンを除去するためのヒーターを組み込んだ.
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