Research Abstract |
これまでは電子線励起X線ホログラフィーの測定における,特性X線の検出を半導体検出器によって行ってきた.しかしながら,この手法では,制動放射によって放出される白色X線の影響によって,せいぜい1%程度の濃度の元素しか測定対象にならない.従って,本年度は,シリコンやゲルマニウムウエハーを高度に成型加工できる高温加圧成型法を用いて,円筒状ゲルマニウム結晶を作製し,その分光特性の評価を行った.これによりホログラムの検出下限を一桁下げることができる.ウエハー(110)はサイズ38mmφのものを用い,曲率半径50mmの円筒状結晶の高精度加工を行った.特性X線発生源試料として5種類の元素を含む合金を作製した.スリットで細く絞ったX線を試料に照射し,複数の特性X線を発生させた.それぞれの特性X線が,円筒状分光結晶の異なる場所において回折し,異なる場所に点として結像される.これらの特性X線の集光具合を,評価するために二次元検出器であるイメージングプレートを用いた.得られた像は,各々の元素のK_α線が,K_<α1>,K_<α2>に明瞭に分離しており,これにより変換された蛍光X線スペクトルはエネルギー分解能13eVに達することも判明した.このエネルギー分解能は,通常の(走査型の)波長分散方式のものと較べ全く遜色はなく,将来的には非走査型のX線分析装置の開発を想起させた.また,光学的な配置を最適化したときの集光点のサイズは0.4×0.2mm^2に達し,この結果より計算される理想面からの結晶方位のばらつきは,円筒状結晶全ての領域で0.1o程度以内と極めて良好であることが判明した.また,同様の実験配置で通常の平板分光結晶を使った場合に比べ,その強度は100倍を越すことがわかり,その集光効率の高さも証明された.
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