2007 Fiscal Year Annual Research Report
化学修飾された層状コバルト酸化物の結晶構造と電子輸送特性に関する研究
Project/Area Number |
18360308
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮崎 譲 Tohoku University, 大学院・工学研究科, 准教授 (40261606)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梶谷 剛 東北大学, 大学院・工学研究科, 教授 (80134039)
湯葢 邦夫 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (00302208)
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Keywords | コバルト酸化物 / 複合結晶 / イオン交換 / 結晶構造 / 電荷秩序 / ミスフィット / 超空間群 / 輸送特性 |
Research Abstract |
アセトニトリルーハロゲン混合溶液中のハロゲン量を変化させることにより、γ‐Na_xCoO_2相のNa量xを詳細に制御する合成法が開発された。この方法を用いて合成されたγ-Na_<0.58>CoO_2相が、室温以下の温度範囲でNaの規則配列に伴う1次構造相転移を示すことが発見された。中性子回折、電子回折、比熱測定により、この化合物は300K近傍ではランダムなNa配列を示すものの、288KにおいてNaが規則配列した√7a×√7a構造に転移し、その際に帯磁率や電気抵抗率にも飛びが現れることが明らかになった。このことは、Naの配列変化が引き金となって、電子伝導を担うCoO_2層の幾何学的配列が変化し、輸送特性にも影響を及ぼすことを意味しており、従来、特定のxのみで見られていた電荷秩序と結晶構造との関連を考察する上で重要な知見になるものと思われる。 空気中で不安定なために、構造・物性とも未知であったα'‐Na_xCoO_2相の単相化に成功し、中性子回折により詳細な結晶構造を解明することに成功した。この化合物は、γ相とは異なり、CoO_2層が平行に積層した単斜晶からなり、Naは酸素の作る八面体の中心から、ややスプリットしたサイトを統計的に75%占有していることが明らかにされた。また輸送特性測定の結果、伝導は金属的で、T_N=27Kで反強磁性秩序を示すことが明らかになった。この化合物は湿気を含む空気中に放置すると、Naサイトに水分子を吸収し、c軸長が大幅に増加した水和コバルト酸化物を形成することが確認された。さらにこの水和物は徐々に水を失い、β相に不可逆的に変態することも明らかになった。α'相が湿気を含む空気中で不安定理由は、この不可逆性にあることが判明した。
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