2006 Fiscal Year Annual Research Report
強磁性形状記憶合金の構造相転移における電子構造変化の実験的解明
Project/Area Number |
18360330
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
今田 真 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 助教授 (90240837)
|
Keywords | 強磁性形状記憶合金 / 電子状態 / 構造相転移 / 光電子分光 / 内殻磁気円二色性 |
Research Abstract |
強磁性形状記憶合金Ni2MnGaの電子状態が他のNi-Mn基ホイスラー合金(具体的には、Ni2MnInおよびNi2MnSn)とどのように異なるかを、紫外線光電子分光と軟X線磁気円二色性を用いて明らかにした。まず、紫外線光電子分光測定を行うことで表面電子状態を比較したところ、Ni2MnGaとNi2MnInの間で電子状態が顕著に異なることが見出された。この違いは、後者においては格子間隔がより大きいために、隣接する遷移金属原子の3d軌道同士の混成が小さくなった結果生じていると解釈される。一方、Ni2MnInとNi2MnSnでは、電子状態があまり変化しないまま後者において電子の占有率が増加し、フェルミ準位が高エネルギー側にシフトしていることが見出された。これは、両者において格子間隔がほぼ同一で、InとSnでは後者において5p電子数が一個多いことによると解釈される。次に、軟X線磁気円二色性測定を行うことで非占有状態のスピン偏極電子状態を比較したところ、Ni2MnGa,Ni2MnIn,Ni2MnSnの間でNi 3d非占有状態が大きく異なることが見出された。これに対し、Mn 3d非占有状態には大きな差異が見出されなかった。さらに、磁気円二色性総和則をスペクトルに適用することで、NiとMnの磁気モーメントを見積もったところ、Mnに対するNiの磁気モーメントの相対強度がNi2MnGa,Ni2MnIn,Ni2MnSnの順に減少していることが明らかになった。これらのことから、光電子分光で観測された電子状態の変化は、Mn 3d電子状態よりもNi 3d電子状態を大きく変化させていると考えることができる。
|