2006 Fiscal Year Annual Research Report
最新分析技術を駆使した材料中の水素-転位ダイナミックス検出と脆化メカニズム解明
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18360336
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
高井 健一 上智大学, 理工学部, 助教授 (50317509)
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Keywords | 水素 / 水素脆化 / 遅れ破壊 / 転位 / 原子空孔 / 水素拡散 / 水素トラップサイト / 昇温脱離法 |
Research Abstract |
材料中の水素-転位ダイナミックスを検出するにあたり、BCC系金属として工業用純鉄、FCC系金属としてInconel625を用いて、水素誘起格子欠陥の生成促進因子および水素脆化感受性をひずみ速度の観点からの検討をした。水素を添加した純鉄を引張速度1.0mm/minと0.02mm/minで塑性ひずみ0.04までひずみを負荷し、その後、室温で水素を放出させ、再度、同一条件で水素チャージした。その結果、時間をかけて引っ張った引張速度0.02mm/minの試験片の方が大幅に水素量の増加が認められた。本試験は純鉄に塑性変形しか与えていないので、水素量の増加は純鉄中の格子欠陥増加に対応する。また、水素を添加した純鉄を引張速度1.0mm/minと0.02mm/minで破断まで負荷した結果、0.02mm/minの延性低下の割合が大きかった。以上の結果から、引張速度が遅いほど、すなわち転位移動速度が遅いほど、水素誘起格子欠陥生成が促進され、水素脆化感受性も高まることが判明した。本試験の試験片は平滑材であり、切り欠きを導入していないので、応力集中部への応力誘起水素拡散を考慮しなくてよいため、転位による水素のdragging motionが原因と推察される。引張速度が速いと水素は転位の動きに追従できず、転位と水素の相互作用は生じにくい。一方、引張速度が遅い場合、水素は転位の移動に追従でき、特に、刃状転位周りは水素雰囲気を保ちながら移動可能であり、転位と水素の相互作用が生じやすい。具体的には、水素が転位の移動を容易にしたり、転位同士の切りあいの際、原子空孔が生じるが、転位周りに水素が存在すれば、生成した原子空孔を水素が占有し安定化し、水素誘起格子欠陥生成を促進しさらには水素による延性低下を助長したと推察される。
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Research Products
(5 results)