2008 Fiscal Year Annual Research Report
六方晶金属・合金の室温クリープにおける転位メカニズムの検討
Project/Area Number |
18360342
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Research Institution | Japan Aerospace Exploration Agency |
Principal Investigator |
佐藤 英一 Japan Aerospace Exploration Agency, 宇宙科学研究本部宇宙構造・材料工学研究系, 教授 (40178710)
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Keywords | クリープ / 六方晶金属 / 転位 / 粒界すべり / チタン / 亜鉛 |
Research Abstract |
室温クリープは、チタン、マグネシウムを含む六方晶金属及び合金に特有の変形メカニズムである。現在チタン合金は宇宙航空用構造材料として広く使用され、特にファスナー材としても使用されるようになってきており、クリープによる緩和は構造物の破壊に繋がる恐れがあり、室温クリープは工業的に重要な問題となっている。我々は、六方晶金属において、室温クリープ領域では、粒内で一つのすべり系のみが働き、転位の切り合いが起こらず、加工硬化が顕著に現れないため、クリープ変形が持続する、ということを明らかにしてきた。しかし対称性の乏しい六方晶において、たった一つのすべり系ではフォンミーゼスの条件を満たすことができず、粒界に堆積した転位は何らかのメカニズムで緩和される必要がある。 そこで本研究は、室温クリープ領域で起こる転位の緩和機構を解明するため、モデル材としてZnを用いてEBSD解析、光学顕微鏡観察そしてAFM観察を行った。EBSD解析結果から粒界付近において約5℃の格子回転が観察され、粒界に転位がパイルアップしていること、光学顕微鏡観察からすべり線が隣の粒へ伝播していないこと、そしてAFM観察から粒界すべりによるステップが明らかとなった。粒界にパイルアップした転位を分解・吸収する緩和機構が働いており、分解された粒界転位が粒界すべりを引き起こすというslip induced grain boundary slidingのメカニズムが働いていることが考えられた。そして、この粒界における転位の分解・吸収が室温クリープを律速しており、20kJ/molという非常に低い見かけの活性化エネルギーをもたらしていると考えられた。
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Research Products
(5 results)