2006 Fiscal Year Annual Research Report
高強度ナノ結晶電析合金の熱安定性・力学特性と熱可塑性を利用した精密成形加工
Project/Area Number |
18360356
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
山崎 徹 兵庫県立大学, 大学院工学研究科, 助教授 (30137252)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 和孝 宇部工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (10156862)
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Keywords | ナノ結晶合金 / Ni-W合金 / 電解析出法 / クリープ / 結晶粒成長 / 塑性変形 |
Research Abstract |
電解析出法により、結晶粒サイズが約5〜6nmで、高強度・高曲げ加工性を有するNi-16.9at.%Wナノ結晶合金を作製した。この合金を室温で引張試験を行うと、引張破断強度が約1600MPaに達したが、破断ひずみ量は僅かに、0.05%程度であり、脆性的に破断した。破断面は粘性流動変形が生じたことを示すベインパターン模様が見られ、本合金が本質的には延性を有することを示していたが、局所的な剪断すべり変形帯の発生が観察された。このことから、本合金は、ナノ結晶化により、すでに硬質化しており、塑性変形中の加工硬化が生じ難いため、局所的な変形が優先して生じていると判断された。この合金の硬度測定を行うと、結晶粒子サイズが約15nm以下の領域で逆ホールペッチ則が観察され、これを300℃以下の比較的低温度領域で加熱すると顕著な熱可塑性が観察された。 この時に見られる塑性変形においては、常温での引張変形時に見られる局所的なすべり変形帯は発生せず、均質な塑性変形が生ずることが確認された。このようなナノ結晶合金特有の塑性変形機構を検討するため、熱機械試験機を用いて、100℃〜300℃の温度範囲内で、弾性変形範囲内の引張応力を負荷してクリープ試験を実施した。その結果、結晶粒成長は、いずれの温度雰囲気でも15nm程度まで短期間に成長した後に停止した。また、この粒成長過程において、負荷した引張応力の増加とともに、クリープ伸びは増加したが、結晶粒径が15nm付近で粒成長が停止すると、クリープ伸びも停止した。このような結晶粒成長過程中に見られる伸びは、最大0.7%に達し、すべり変形帯の形成を伴わない均一な変形を示した。 現在、紫外線フォトリソグラフィー技術を用いたマイクロ材料試験片の作製の準備を進めている。平成19年度にはこれら疲労試験、TEM観察中の高温引張試験を実施する予定である。
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