Research Abstract |
本研究では,多元系アサーマルガラスの組成設計を目指して,固体シリケートガラスの屈折率および線膨張係数を温度の関数として測定し,アサーマルガラス実現のための添加成分の可能性を検討することを目的としている。 今年度は,Na_2O-SiO_2系,CaO-Na_2O-SiO_2系およびCaO-K_2O-SiO_2系の3種類のガラスについて調査を行った。それぞれのガラス試料は溶融状態から急冷して作製した。屈折率測定用の試料については,得られたガラス試料を厚さ2mm,直径30mmに加工し,鏡面研磨を行った。また,線膨張係数測定用試料については,試料表面を鏡面研磨した後,高さ2mm,直径1mm程度の円柱状に加工した。屈折率測定には,高温用エリプソメータを用いた。また,線膨張係数は,レーザー顕微鏡を利用して測定した試料の高さ変化から決定した。いずれの測定も,室温から573Kの温度範囲において,昇温過程でおよそ50Kおきに測定した。 Na_2O,CaO,K_2Oの濃度が増加するにつれて,ガラスの屈折率および線膨張係数の値は増加し,屈折率の温度係dn/dTの値は減少することが分かった。これらの結果から,それぞれのガラスについて光路長の温度係数dS/dTを算出したところ,本研究で扱った試料のdS/dTの値は全て,SiO_2ガラスの値と比べて,14〜149%大きくなった。また,添加物濃度が高いほど,dS/dTの値は大きくなる傾向があった。アサーマルガラスでは,dS/dTの値は0に近いことが求められるので,本研究で扱ったNa_2O,CaOおよびK_2Oは,アサーマルガラス設計のための添加成分としては適していないと結論できる。アサーマルガラスの実現のためには,アルカリ・アルカリ土類酸化物とは別に,B_2O_3やFなどの新たな添加成分について調査する必要がある。
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