Research Abstract |
噴霧燃焼に特徴的な燃焼モードとして群燃焼がある.たまたま,シュプリンガー社から発行予定の噴霧に関するハンドブックにおいて群燃焼に関する章の執筆依頼があったことより,噴霧燃焼に関する過去の研究のレビューと解決すべき問題点について深く考える機会を得た.その結果,微粒化後の現象については,現行の計算スキームを発展させ噴霧燃焼の特徴を正しく捉えたシミュレーションができるとしても,燃焼状態を規定するのは微粒化によって作られた噴霧の状態であり.一番肝心な噴霧形成の予測ができなければ,設計に使える実用的なシミュレータになりえず,この点で過去の研究もどうどうめぐり状態に陥っていることが判然とした.そこで,(1)既に本研究では,従来の噴霧燃焼シミュレーターに欠落していた液滴間火炎伝播の効果を組み込み,噴霧燃焼を特徴つける群燃焼を再現するアルゴリズムの構築を終えていること,および,(2)本研究の大きな目玉になる成果として,微小重力実験の結果の考察より,乱流微粒化に関する新しい概念が導かれ,微粒化サブグリッドモデルの構築に必要な液糸の微粒化過程を記述する理論が完成し,微粒化シミュレータ開発への筋道が描けるようになったことより,研究目標を微粒化シミュレータの開発に特化し,JAXAおよび東大との連携で液体ロケットエンジンの設計に実用化できる微粒化シミュレータの開発を目指す研究に組みなおす作業をおこなった.幸いこの計画は基盤研究(A)として採択された.さらに幸運なことに,今年度JAXAに新しく導入されたスパーコンピュータのお披露目式典に使うデモ用計算として,基盤研究(A)で予定していた高速噴射液の微粒化の直接シミュレーションが採択され,独占的にスパーコンピュータを使用する機会を得た.これにより世界で初めて,実際の高速噴射液の微粒化過程を信頼できる形で数値計算することに成功し,高速噴射液からの無数の液糸の形成過程など,乱流微粒化サブグリッドっモデルを作るのに必要なデータを前倒しで獲得できた.その結果は本研究で提案してきた新しい微粒化概念の妥当性を検証するものであった.これまで複雑でわからないことは全て乱流の性にし,深く考究されることがなかったが,乱流微粒化も比較的単純な自己完結的な法則の繰り返しによって起きていることが証明され,本研究の構想を支えるものになった.
|