Research Abstract |
1.衝撃波管による微視的過程のモデルパラメータ計測:H19年度に開発した短時間高解像時間凍結多点同時分光システムを用いて窒素、空気、を模擬した作動ガスについて、衝撃波背後の発光分光・真空紫外吸収分光を行い、3で解析的にモデリングされる微視的過程の検証,およびモデルパラメータの計測を行った.結果として,120-200nmの真空紫外分光は従来の熱化学・輻射モデルが50%ほど過剰評価していること,また従来のN2+イオンの発生モデルは100-1000倍ほど過大評価していることなどが明らかになった. 2.極短秒時光学計測の改善:衝撃波管を用いた気流の分光計測技術の開発を行った.特に衝撃波背後の極めて短時間の現象を計測する短秒時光学計測技術を開発した.ここではダブルレーザーシュリーレンシステムによる衝撃波速度,衝撃波位置の高精度検出技術を開発し,既存のイメージング分光器と光学系を用いてVIS波長域での時間凍結イメージング分光法を改善し,同真空紫外分光を開発した.これらの技術を用いて,N2分子の回転・振動モードの微視的な励起分布情報を取得し,従来モデルの検証を行った. 3.量子論的解析および状態遷移理論による微視的モデルの開発:微視的モデルの開発を以下の手順で行った.(1)量子論的解析コード(GAUSSIAN03)を用いたab initio電子軌道解析によりCO-O分子間衝突ポテンシャル面を決定し,解析近似を行った.(2)上記ポテンシャル面を用いてCO-O分子間衝突の準古典的軌道解析,統計処理により状態遷移速度係数,解離係数を決定した.(3)状態遷移速度係数,解離係数を解析的に近似して数値解析に供する形に整備した.(4)上記係数を利用したマスタ方程式,DSMC-QCT解析により,巨視的なCO-O衝突によるCO分子の回転・振動緩和モデル,および解離モデルの開発を行った.その結果,CO解離モデルはCO+O->C+O+Oという直接反応と,CO+O->CO+O2,O2+M->O+O+Mという交換-解離反応から構成されることが明らかになり,実験的に観測されるものは両者の和であること,低温では交換-解離反応が卓越するために,CO解離エネルギーが大きいにもかかわらず解離反応が促進されることが明らかになった.解析結果に基づいて新しいCOの解離モデルを再構築した結果,従来の実験結果をよりよく再現できることが明らかになった. 4.巨視的解析モデルの開発と統合解析手法の高度化:CFRPアブレータ熱防御材の熱応答熱応答モデルの高度化(窒化モデルの導入),多次元化,および流れ場との連成解析手法の高度化を計り,実験で得られる巨視的観測量との比較,検証を行うことでモデルの高精度化を行った. 5.成果の発信:関連研究の裾野を広げるために,関連分野で研究会を開催して横断的な研究グループを構成し,学術会議で企画セッションを開催し(2件),また上記研究により得られた成果を積極的に発信した.その内訳は論文リストに示す.
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