Research Abstract |
岩盤壁面や深層ボーリングを利用して,国内では最も豊富に亀裂データが蓄積されている地区の一つである菊間花崗岩体と土岐花崗岩体をテストサイトとし,下記の4項目のデータ解析,試料分析,フィールド調査によって流体移動・地殻変動という観点から断層の特徴付けを行った。 (1)地質と亀裂の3次元分布モデリング:断層や不整合によって不連続に分布する地質と物性,および節理や断層を含む亀裂の3次元分布に対する空間モデリング法を開発した。地質・物性に関してはデータのインディケータ変換と3次元最適化原理の組み合わせが有効であることがわかり,データ数が極端に少なくても妥当な空間分布モデルが得られた。一方,亀裂に対しては,各データの座標,亀裂密度,方位(走向・傾斜),幅の空間的相関構造をセミバリオグラムによって明らかにし,これと地球統計学的補間法・シミュレーションを用いれば,亀裂分布モデルが得られることがわかった。亀裂分布には,連続性の良い断層破砕帯の存在が現れた。これらの地質・断層モデルを組み合わせ,断層幾何(方位・幅・長さが与えられた断層の全空間分布),および断層性状(断層の分布と岩相・物性との関係)を把握するための基本的なツールが作成できた。また,温度分布のインバージョン解析により,断層の広域的な透水係数が推定できた。 (2)断層周辺の鉱物分析:断層周辺のハローの主要構成鉱物や断層の充填鉱物の種類を明らかにし,各種類の分布形態に関する空間的相関構造を明らかにした。 (3)地形解析による断層分布の推定:数値地形モデルを用いたリニアメント解析により,(1)による亀裂分布モデルと断層に関連する地形的特徴の方位分布が調和的であることを見出した。 (4)断層上のラドンガス測定と表土サンプリング:ラドン探査と表土サンプリングから断層表層部の放射性核種濃度を測定し,断層のダイナミクスや透水性に関する不均質構造の一部を明らかにできた。
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