Research Abstract |
前年度までは,InSbの結晶育生を行う際に,始めにゾーンメルト法によって不純物を除去し,その後,垂直ブリッジマン法によって単結晶化を行った.しかし,この方法では,ゾーンメルト法における不純物除去の際に2度,石英アンプルの溶断を行う必要がある.また,垂直ブリッジマン法による単結晶育成には,3〜4週間程度の長い時間を要する,という欠点があった.これらの不都合をなくすために,ゾーンメルト法だけを用いて,不純物除去と単結晶育成とを行った.結晶育生に用いる石英アンプルを,内径7mmから15mmのものに変更した.ゾーンメルトの際に,結晶の断面が大きい方が,偏析効果が大きいためである.また,結晶純化および単結晶育成時に,アンプルを約8度の角度に傾けた.これはゾーンメルトによって結晶がヒーターの移動方向に動くことを抑える効果と,単結晶育成時に結晶がアンプル先端の円錐部分に接する効果をもたらす.育成したInSb結晶のHall測定を行った.比較のため,市販のInSbウエハのHall測定も行っている.測定結果は,育成したInSb結晶の長さ方向の中央部分のウエハは,市販のウエハと同様の比抵抗値,Hall移動度を示した.X線回折法によって,市販ウエハと育成したウエハの結晶性を比較した.この結果,育成したウエハのロッキングカーブの半値幅は,市販のものより100倍程度,悪いことが分かった.すなわち,結晶性では,市販品より100倍悪い結晶が育成され,比抵抗値,Hall移動度は,市販品と同等である結晶が育成された.今後,結晶性に注意した育成を行うことで,さらに高比抵抗値の結晶が育成できると期待できる.
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