2006 Fiscal Year Annual Research Report
環境要因がいかにして個体発生を制御するかに関する分子生態発生学的研究
Project/Area Number |
18370007
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
三浦 徹 北海道大学, 大学院地球環境科学研究院, 助教授 (00332594)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前川 清人 富山大学, 理学部, 助手 (20345557)
柴尾 晴信 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助手 (90401207)
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Keywords | 表現型可能性 / 環境要因 / 化学生態 / 固体間相互作用 / 後胚発生 |
Research Abstract |
本研究では,環境要因がいかにして個体に受容され発生機構に反映されていくのかを解明することを目的とする.環境要因は化学物質や個体間相互作用などによる外界シグナルであるが,この外界シグナルがいかにして個体に受容され,その個体の生理条件に影響を与え,ひいては発生プログラムを改変していくのかを,システマティックに理解することを試みている. 18年度はオオシロアリHodotermopsis sjostedtiにおけるフェロモンタンパクの解析が大幅に進み,この分子の獲得が社会コミュニケーションの進化にどのように関わってきたかに関する興味深い示唆が得られた(三浦).更には,ヤマトシロアリReticulitermes speratusにおいても個体間相互作用による兵隊分化の抑制とその発生機構に関する重要な結果も得られた(前川).また,ハクウンボクハナフシアブラムシTuberaphis styraciの警報フェロモンと兵隊分化に関しても新たな知見が得られ,社会性昆虫における個体間相互作用への理解がいっそう深まった(柴尾).さらにはミジンコDaphnia pulexの防衛形態に関しても分子発生学的解析が進んだ(三浦). 19年度は,上記の結果をふまえ,いかなる化学物質が上記の相互作用に寄与しているのか,また個体内の生理的変化にいかなる影響を与えるのかに関する,化学生態学的解析および生理学的解析に力点を置く.さらに,化学物質を外界シグナルとして受容するためには,何らかの化学受容器が生物個体に存在しなくてはならない.そこで触角などの組織形態学的観察を精力的に行う必要がある.さらに,外界シグナル受容と生理状態をつなぐ神経機構も無視はできない.これらのことをうまくつなげる解析手法の模索も試みる予定である.
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