Research Abstract |
本研究では,環境要因がいかにして個体に受容され発生機構に反映されていくのかを解明することを目的として,シロアリ・アブラムシ・ミジンコを材料に研究を推進している.環境要因は化学物質や個体間相互作用などによる外界シグナルであるが,この外界シグナルがいかにして個体に受容され,その個体の生理条件に影響を与え,ひいては発生プログラムを改変していくのかを,システマティックに理解することを試みている. 19年度は,オオシロアリHodotermopsis sjostedtiにおける外分泌腺の解析が進展し,大顎腺や唾液腺などからの分泌物が個体間相互作用に大きく関わることが,分子データにより示唆された.また,これらの外的要因を媒介するインスリンシグナリング経路に関する解析も進展した(三浦).ヤマトシロアリReticulitermes speratusにおける解析では,繁殖虫への分化における器官発達の詳細を解析し,特に複眼や生殖腺の発達に関する知見を蓄積した(前川).また,ハクウンボクハナフシアブラムシTuberaphis styraciの兵隊分化の解析においては,化学物質とその受容機構の関係を化学分析と電気生理学を組み合わせた新たな手法を用いることで,これまでよりも立ち入った解析が可能となった(柴尾).さらにはミジンコDaphnia pulexの防御形態の形成時に発現が上昇する遺伝子の同定と発現解析が完了した(三浦). 20年度はこれらの結果をふまえて更なる解析を進めるとともに,各動物種で得られた知見を比較・検討し,外界シグナルと生理機構,ひいては発生分化のメカニズムを結びつけるような原理に関する考察を行い,研究をまとめていく予定である.
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