2006 Fiscal Year Annual Research Report
マルチスケール分析による嗅覚系神経回路の基本デザインの解明
Project/Area Number |
18370028
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神崎 亮平 The University of Tokyo, 先端科学技術研究センター, 教授 (40221907)
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Keywords | 昆虫 / 脳・神経 / 遺伝子 / 神経科学 / 生理学 / 嗅覚 |
Research Abstract |
生物の嗅覚情報処理機構の解明を目的に、本研究はカイコガー次嗅覚中枢である触角葉を構成する神経細胞を対象に以下の解析を行った。 嗅受容細胞と触角葉糸球体との対応を明らかにするために、性フェロモン受容体遺伝子であるBmOR1またはBmOR3の上流領域をプロモータとしてGFPを発現する遺伝子組換えカイコガを作出した。BmOR1とBmOR3の発現細胞の軸索はそれぞれ、大糸球体のトロイドとキュムラスと呼ばれる異なるユニットに収束して投射しており、フェロモンの情報は糸球体への入力レベルから異なる領域で処理されることを示唆した。これらの嗅受容細胞の神経活動を計測するためにカルシウム感受性蛍光タンパク質GCaMPを発現する遺伝子組換え体の作出を行ったが、系統の確立にはいたらず、19年度以降に継続して行う予定である。 並行して、触角葉からの出力神経である投射神経の解析を行った。細胞内記録法により神経活動を記録後、同じ細胞の分枝パターンを細胞内染色法により分析、再構成することで、単一投射神経の活動と糸球体構造を明確に対応付ける方法を確立した。この方法を用いて、匂いの情報が触角葉の時空間的な活動パターンにより表現されることを明らかにした。 さらに、視認下電極刺入法により、局所介在神経の形態の同定を網羅的に行い、分枝領域の違いにより5タイプに分類されることを示した。視認下電極刺入法による生理応答の記録に数例成功したものの、局所介在神経の生理応答データ取得については十分な成果を得るにいたっておらず、19年度以降に継続して行う。 本研究に関連して、昆虫の嗅覚情報処理機構を考察した総説、図書を計3編発表した(神崎、2006;櫻井ら、2006;関ら、2007)。また成果の一部は、日本比較生理生化学会、日本動物学会、アメリカ化学感覚学会、ヨーロッパ味と匂い学会等の国内外の学会の学術会議において報告した。
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Research Products
(3 results)