2008 Fiscal Year Annual Research Report
マルチスケール分析による嗅覚系神経回路の基本デザインの解明
Project/Area Number |
18370028
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神崎 亮平 The University of Tokyo, 先端科学技術研究センター, 教授 (40221907)
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Keywords | 昆虫 / 脳・神経 / 遺伝子 / 神経科学 / 生理学 / 嗅覚 |
Research Abstract |
生物の嗅覚情報処理機構の解明を目的に、カイコガー次嗅覚中枢である触角葉を構成する神経細胞を対象に以下の解析を行った。複数のオス個体の触角葉の共焦点顕微鏡像の3次元再構成を行い、糸球体の相対位置を調べることで、精密な糸球体地図を構築した(Kazawa et al.,2009)。構築した地図を参照しながら、細胞内記録法により神経活動を記録後、同じ細胞の分枝パターンを細胞内染色法により分析、再構成することで、単一投射神経の活動と糸球体構造を明確に対応付ける方法を確立した。異なる匂い刺激に対する活動の比較から、匂い情報は糸球体の時空間的な活動パターンによって表現されていることを明らかにし、これらの結果を原著論文として発表した(Namiki andKanzaki,2008)。並行して、局所介在神経の匂い応答を単一神経および神経ネットワークレベルで調べるために、エレクトロポレーション法により神経細胞にカルシウム感受性色素を注入する技術を開発した。この方法を用いて、局所介在神経の応答は投射神経の応答より潜時が短い可能性を示唆する結果を得た(Fujiwaravet al.,inpress)。また、本研究期間内に触角葉の構成神経全体を対象にしたシミュレーションには至らなかったものの、これまでに得られた研究成果をもとにして、局所介在神経をモデルとして単一神経の入出力をシミュレーションする技術の開発に成功した。さらに、シミュレーションの妥当性を検証するために、光感受性イオンチャネルであるチャネルロドプシン2をフェロモン受容細胞で特異的に発現するカイコガを作出し、光照射の時間および強度依存的に神経活動を人為的に制御する系を確立した。 上記に加えて、本研究の成果に関連して、原著論文を2編(Kazawa et al.,2008;Fukushima and Kanzaki,2009)、昆虫の嗅覚情報処理機構を考察した総説、図書を計5編発表した。また成果の一部は、日本比較生理生化学会、国際嗅覚味覚シンポジウムなどの国内外の学会の学術会議において報告した。
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Research Products
(26 results)