2006 Fiscal Year Annual Research Report
海水湖で固有進化したクラゲ類に共生する藻類も固有進化するのか
Project/Area Number |
18370032
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
原 慶明 山形大学, 理学部, 教授 (60111358)
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Keywords | 海水湖 / 固有進化 / 共生藻類 / タコクラゲ類 / psbA / ミニサークルDNA / ハプロタイプ / 地理的隔離 |
Research Abstract |
7月にパラオ、9月に宮古島および甑群島の海水湖にタコクラゲ類の採集・調査を挙行した。以前から蓄積してあるサンプルと今回採集したサンプルを用いて、(1)クラゲ体からの共生藻類の単離・培養、(2)固有進化を追跡できる分子マーカーの探索、(3)その分解能・適性の検証、(4)海水湖内クラゲ3集団と海水湖外1集団(いずれも固有進化し、亜種とされている)を用いた共生藻類固有進化解析の試行を行った。 分子マーカーの適性試験に必要なクラゲ体より共生藻のSymbiodiniumのクロン培養株の確立を目指し、単細胞分離を試みたが、成功しなかった。これまでも成功例はなく、次年度、再度試みて、成功しなかった場合にはこの実験は放棄する。分子マーカーとして葉緑体ゲノム(多くの遺伝子がミニサークルDNAとする特異な存在様式を持つことに着目)のpsbA遺伝子(ca.2kbp)を候補とし、その遺伝子のコピー数およびコード領域と非コード領域に分けて進化速度の検証をクラゲ個体集団と海産ラッパムシから単離したクロン株を用いて行った。psbAのコード領域にはほとんど変異が見られなかったので、非コード領域の比較的保存(進化速度の遅い)領域に着目することとした。同時に、単一細胞内にpsbA遺伝子(非コード領域)のコピーがいくつ存在するのかを検討し、最大4個であることを確認した。いずれの細胞にも共通する基本配列があることから、コピーが存在しても適度な進化速度を持つ領域なので分子マーカーとして有効と判断した。 この分子マーカーを用いて、ジェリーフィッシュ湖(JFL)、オンガエル湖(ONG)、ンゲルタオブ湖(NGO)および外海(OUT)から採集したタコクラゲ集団の遺伝的多様性を解析した。その結果、JFLとNGOにはそれぞれの湖独特のハプロタイプが存在し、ONGにはこの湖独特のハプロタイプとOUTのハプロタイプが共存していた。さらにJFLには主要ハプロタイプと1塩基置換したハプロタイプが多数存在し、現在遺伝的多様化の進行中であることを示唆していた。NGOは検体数が少なく結論は出せないが、どのハプロタイプともネットワークを形成せず、その集団遺伝学的な挙動が注目される。ONGは外海にハプロタイプと混在することから、地理的隔離が完全ではなく、遺伝子交流の可能性を示唆した。
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Research Products
(3 results)