2006 Fiscal Year Annual Research Report
被子植物雌蘂における花粉管伸長と受精様式の多様性と進化:特にブナ目について
Project/Area Number |
18370036
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
戸部 博 京都大学, 大学院理学研究科, 教授 (60089604)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
十河 暁子 京都大学, 大学院理学研究科, 講師(研究機関研究員) (50378569)
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Keywords | 被子植物 / 授精 / 花粉管 / ブナ目 / トチュウ / 花粉管誘導 / 配偶体選抜 / 多様性 |
Research Abstract |
多くの被子植物では受粉から受精まで1-2日で終わるが、幾つかの植物群では、短くて4日、多くは4-5週間、長いものでは1年以上かかることが知られている。そうした植物の代表的なものとしてブナ目やガリヤ目などが知られている。それらの植物では、なぜ受精が遅れるのか?花粉管は受精の遅れの間にどこで何をしているのか?花粉管は雌蕊内でどのように誘導されているのか?それらの疑問に答えるための光学顕微鏡、蛍光顕微鏡、走査型電子顕微鏡などを使って、ブナ目を中心に研究し、ガリヤ目、本年度は、イヌブナ(ブナ目ブナ科)とトチュウ(ガリヤ目トチュウ科)について発表した。 イヌブナでは、受粉時には胚珠は未成熟であり、胚珠が成熟し受精可能になるまで5週間かかる。柱頭で発芽した花粉管は胚珠の発生の進行とともに伸長し、珠柄と珠孔近くでの停止・再伸長を、胚嚢に達するまでに3段階の不連続伸長を示すことが明らかになった。その間、多数の花粉管が1本に減少し、子房内の6胚珠のうちただ1個とのみ受精する。 一方、トチュウで、受粉時には胚珠は未成熟であり、花粉管は胚珠の発生とともに伸長し、受粉後11-13日間で受精に至る。その間、花粉管は胎座組織内、珠柄を経て珠皮先端組織内で停止する。従って、花粉管は受粉から受精に至るまでに、3段階の不連続伸長を示し、その間に受精する花粉管は1本のみに減少する。 イヌブナでもトチュウでも、受精の遅れは、花粉管や受精する胚珠数の減少をともなうため、配偶体選抜に寄与していると考えられる。しかし、子房内における花粉管の停止位置、すなわち花粉管誘導位置は両者で大きく異なっており、それぞれ独立の進化したものと考えられる。
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