2007 Fiscal Year Annual Research Report
被子植物雌蕊における花粉管伸長と受精様式の多様性と進化:特にブナ目について
Project/Area Number |
18370036
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
戸部 博 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 教授 (60089604)
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Keywords | 被子植物 / 受精 / 花粉管 / ブナ目 / ティコデンドロン科 / オゼソウ属 / 花粉管誘導 / 閉塞組識 |
Research Abstract |
多くの被子植物では受粉から受精まで1〜2日で終わるが、幾つかの植物群では、短くて4日、多くは4〜5週間、長いものでは1年以上かかることが知られている。そうした植物の代表的なものとしてブナ目が知られている。それらの植物では、なぜ受精が遅れるのか?花粉管は受精の遅れの間にどこで何をしているのか?花粉管は雌蕊内でどのように誘導されているのか?それらの疑問に答えるため、各種顕微鏡などを使って研究した。本年度は、主な成果としてティコデンドロン科(ブナ目)とオゼソウ属(単子葉植物サクライソウ目)について発表した。ティコデンドロン科は中米にただ1種分布するTicodendron in cognitumからなり、ブナ目の他の科と同様、受粉時にはまだ胚珠は成熟していない。花粉管は柱頭から胚嚢に到達するまでの間に4箇所(花柱内、子房上部の組織、珠柄内外、合点)で停止し、胚珠や胚嚢の発達に応じて、伸長と停止を繰り返す。このような受精遅滞と合点受精が雌雄選抜に役立つこと、5段階の花粉管伸長様式はモクマオウ科、ティコデンドロン科、カバノキ科(ここでは1段階喪失)の進化系列の特徴であることを明らかにした。また、オゼソウ属は日本固有のオゼソウ1種からなる属で、属としても、サクライソウ科(目)としても初めて受精に関わる生殖器官の発生研究を行った。この種には受精遅滞はない。しかし、胚珠の発生初期に珠心先端の表皮細胞の平層分裂により通称nucellar cap(珠心帽)が形成される。受精のために花粉管が珠心先端に到達する直前に、珠心帽の細胞は顕著に細胞質が豊富になることが明らかになった。このことから、珠心帽が花粉管誘導のための閉塞組織として機能していることを初めて明らかにした。
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