2008 Fiscal Year Annual Research Report
被子植物雌蕊における花粉管伸長と受精様式の多様性と進化:特にブナ目について
Project/Area Number |
18370036
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
戸部 博 Kyoto University, 大学院・理学研究科, 教授 (60089604)
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Keywords | 花粉管誘導 / 受精 / クスノキ目 / サトイモ科 / ショウブ科 / サクライソウ目 / 胚珠 / 閉塞組織 |
Research Abstract |
これまでの研究によって被子植物では花粉管誘導の仕組みと受精様式が多様に進化していることが明らかになってきたが、まだごく一部の植物群でしか確認されていない。花粉管は雌蕊内でどのように誘導されているのか?それらの疑問に答えるため、各種顕微鏡などを使って研究した。本年度は、主な成果としてハスノハギリ科とモニミア科(クスノキ目)とショウブ科、サトイモ科、サクライソウ科(単子葉植物)について発表した。ハスノハギリ科とモニミア科も主に熱帯に分布する植物である。これらの植物のembryologyの研究を通して、受粉時に胚珠が成熟していること、花粉管は珠孔受精であることなどを明らかにした。また、ショウブ科は単子葉植物の中で最も先に分岐した植物群で子房室内に下向きの直生胚珠をもっている。ショウブとセキショウの観察によって、花粉管は毛状に発達する内珠皮内層細胞と珠心先端表皮細胞によって誘導されることを明らかにした。サトイモ科は、ショウブ科に次ぐ原始的単子葉植物だが、珠心先端部の細胞(組織)が閉塞組織として花粉管誘導に関わっている可能性を明らかにした。更に、昨年研究したオゼソウ属に続いて、同じサクライソウ目に含まれるサクライソウ属の観察を行ったところ、サクライソウにはオゼソウに見られたような花粉管誘導のための閉塞組織として機能する珠心帽が形成されないこと、サクライソウでは胎座に閉塞組織が形成されることがわかった。このことから、近縁な植物であっても、サクライソウはオゼソウとは全く異なる花粉管誘導の仕組みが働いていることが明らかにした。
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