2007 Fiscal Year Annual Research Report
南硫黄島の生物多様性と適応放散的種分化の初期過程に関する研究
Project/Area Number |
18370038
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
加藤 英寿 Tokyo Metropolitan University, 大学院・理工学研究科, 助教 (50305413)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅原 敬 首都大学東京, 大学院・理工学研究科, 准教授 (10226425)
可知 直毅 首都大学東京, 大学院・理工学研究科, 教授 (30124340)
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Keywords | 進化 / 分類学 / 種分化 / 大洋島 / 適応放散 / 小笠原諸島 / 南硫黄島 |
Research Abstract |
南硫黄島は生物種分化の初期過程を解明する上で重要な島であるとともに、有史以来人類の永住記録がなく原生の自然が残る貴重な島である。本研究では2007年6月、南硫黄島自然環境調査を25年ぶりに実施し、植物相の現状を可能な限り把握するとともに、過去の調査結果と比較して25年間の変化を推定した。収集された約1000点の標本を同定した結果、現時点で維管束植物種は96種(未同定種を含む)が確認され、過去の記録に無い種が9種含まれていた。外来種と考えられる種は7種確認され、全種数に占める割合は10%以下(小笠原諸島全体では40%以上)と著しく低いが、25年前の調査で全く確認されていなかったシンクリノイガ(外来種)が海岸部を中心に島内に広く生育していた。これはおそらく海鳥などの羽毛に付着して運ばれた可能性が高く、今後も硫黄島など周辺の島から間接的に外来種が持ち込まれることが危惧される。また絶滅危惧種は18種確認され、標高が高い地点ほど多い傾向が見られた。25年前の植物の垂直分布調査結果と比較したところ、山頂部よりも中腹部で植物種の変化が大きかった。この原因ははっきりしたことは分からないが、中腹部で森林面積が少ない(あるいは減少した)ために、台風などの自然攪乱の影響を受けやすかったのではないかと推察される。さらに現地調査では、小笠原諸島で適応放散してきたと考えられるシロテツ属やムラサキシキブ属、タブノキ属などの植物群のDNAサンプルを多数収集し、現在、集団遺伝学的解析を進めている、これまでにムラサキシキブ属において、南硫黄島集団は遺伝的多様性が小笠原群島の集団よりも低いことなどが明らかとなり、南硫黄島の成立年代が比較的新しいことによるものと考えられる。
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Research Products
(11 results)