2007 Fiscal Year Annual Research Report
キイロショウジョウバエを用いた脳の高次視覚中枢における神経回路構造の体系的解析
Project/Area Number |
18370060
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 啓 The University of Tokyo, 分子細胞生物学研究所, 准教授 (00311192)
|
Keywords | ショウジョウバエ / 視覚系 / 前部視覚中枢 / 糸球体 / 情報の統合 / 嗅覚系 / 聴覚系 / GAL4エンハンサートラップ |
Research Abstract |
高次視覚中枢への投射の全貌を把握するため,前部視覚中枢に続いて後部視覚中枢の構造も解析し,両者を比較した。前部視覚中枢は一次視覚中枢の中のlobula領域からの投射を受けているのに対し,後部視覚中枢はlobula plate領域からの投射およびlobulaとlobula plate両方の領域からの投射を受けていた。また,前部視覚中枢と同様に,後部視覚中枢にも視覚だけでなく嗅覚系からの神経投射を発見した。ただし嗅覚系低次中枢からの投射経路は,前部視覚中枢と後部視覚中枢では大きく異なっていた。前部視覚中枢と後部視覚中枢は一見すると一体化した構造であるため,その境界は従来はっきりと規定されていなかった。しかし,上記のように両者では投射する視覚神経の経路が異なることから,視覚中枢内の糸球体の分布を,各糸球体が由来する低次中枢の領域ごとにマップすることによって,その境界線として,両中枢の位置関係を精密に規定した。 昨年度の研究で,聴覚感覚器の神経が前部視覚中枢に投射することを発見したが,さらに聴覚一次中枢からの介在神経も,同じ領域に投射することを見出した。ただし,嗅覚系の場合は投射領域が視覚系の投射とかなり入り組んだ関係にあるのに比べ,聴覚系の投射領域は視覚中枢の下部に限られ,他とは明確に独立していた。他の解剖学的特徴とも合わせ,この部分は,前部視覚中枢でなく別個の領域として定義し直すことにした。 以上の研究で,昆虫の代表的高次視覚中枢とその内部の構造を,初めて明確に示すことができた。
|