2008 Fiscal Year Annual Research Report
ゼブラフィッシュ網膜における層構造形成のメカニズムの解明
Project/Area Number |
18370092
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Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
政井 一郎 Okinawa Institute of Science and Technology, 神経発生ユニット, 代表研究者 (50242087)
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Keywords | ゼブラフィッシュ / 網膜 / 細胞接着 / 細胞極性 / 細胞増殖 / 神経細胞分化 / N-cadherin / 突然変異体 |
Research Abstract |
脊椎動物の網膜には6種類の神経細胞が分化し、層構造を形成する。我々の研究から、ゼブラフィッシュの突然変異体parachute(pac)では、網膜神経細胞は分化するが層構造が形成できないこと、そしてpac遺伝子は接着分子であるN-cadherinをコードすることが明らかになった。本研究では、N-cadherinの網膜での役割を明確にするために、ゼブラフィッシュ網膜の細胞分化の様々な段階、N-cadheinの機能を阻害する。今年度は、ath5遺伝子エンハンサーを利用して、pac突然変異体において、N-cadherinを網膜神経細胞で特異的に発現させた。具体的には、ath5:Gal4VP16とUAS:N-cadherinのコンストラクトをゲノムに導入したトランスジェニック系統を確立し、pac変異のホモ接合体においてこれら2つのトランスジーンを同時に持つ個体を得た。この個体を解析した結果、pac変異体で見られる網膜層構造の異常はレスキューされなかった。このことから、網膜前駆細胞でのN-cadherinが層構造の形成に必須であることが示唆された。また、pac変異体では、視神経の交叉異常や、網膜神経細胞が脳内へ侵入する表現型を示すが、ath5:Gal4VP16とUAS:N-cadherinの導入で、これらの表現型は完全に回復した。このことから、視神経の伸長やそれに伴う網膜と脳の境界面の維持には、神経細胞でのN-cadherinが重要であることが明らかになった。 また、昨年度、pac変異体を含む、細胞極性に異常を示すゼブラフィッシュ突然変異体では、網膜神経細胞への分化が抑制されていることを報告した。今年度の詳細な解析により、これらの変異体では網膜細胞の分裂様式の切り替えに異常があることが明らかになった。これらの結果から、細胞極性と細胞分裂の様式変換に密接な関係が示唆された。
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