2007 Fiscal Year Annual Research Report
劣勢致死変異体を用いた包括的な初期胚発生分子機序の解析
Project/Area Number |
18370094
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Research Institution | Research Institute, Osaka Medical Center for Maternal and Child Health |
Principal Investigator |
松尾 勲 Research Institute, Osaka Medical Center for Maternal and Child Health, 病因病態部門, 部長 (10264285)
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Keywords | マウス / 遺伝学 / 劣性致死変異体 / ヘパラン硫酸鎖 / プロテオグリカン / Ext2 / 胚体外外胚葉 / 発生 |
Research Abstract |
1、現在までにトランスジーン挿入によって胚性致死を示す変異体がExt2遺伝子のナル変異であることを見いだしている。at2は、プロテオグリカンコアクンパク質にヘパラン硫酸鎖を付加重合する活性を持つ。そこで、ヘパラン硫酸鎖特異的な抗体で解析すると、ホモ変異胚では、プロテオグリカンのヘパラン硫酸鎖が失われていた。一方、コンドロイチン硫酸鎖は、正常に付加され、コアタンパク質も、細胞膜や基底膜などに正常様に分布していた。つまり、Ext2遺伝子は、プロテオグリカンへのヘパラン硫酸鎖の付加に必須であるが、コア蛋白質の細胞内局在制御には必須ではないといえる。2、ヘパラン硫酸鎖は、分泌性シグナル因子の適切なシグナル伝達機能に関与していると示唆されている。そこで、変異胚において、分泌性シグナル因子の標的遺伝子の発現を解析した結果、FGFの標的遺伝子の発現が失われていた。一方、Fgf受容体やリガンドの発現は、失われていなかった。つまり、変異胚で見られる異常は、主にヘパラン硫酸鎖が無いために、シグナルが適切に伝達されないことに起因していることが示唆された。一方、Wnt, BMP, Shh, Nodal等の標的遺伝子の発現は変異胚でも活性化されていたことから、これら分泌性因子は、ヘパラン硫酸鎖が無くても、シグナルを伝達できることか分かった。3、FGFからのシグナルにヘパラン硫酸がどのように関与しているか明らかにするため、外植体を用いて、FGFに対する反応性を解析した。野生型胚の外植体では、FGFによって、下流標的分子の発現が誘導された。一方、変異胚では、下流の遺伝子は活性化されなかった。しかし、ホモ変異体の外植体にヘパリンを添加すると、下流遺伝子の誘導が一部観察された。また、野生型胚においては、ヘパリンを添加すると、より広範囲に下流遺伝子の活性化が見られた。以上から、ヘパラン硫酸鎖は、FGFが細胞内にシグナル情報を伝える上で必須であることが明らかになった。
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