Research Abstract |
夜間の光曝露による非視覚的作用の個体差と指標間の協関性を明らかにするための実験を行った.今年度は昨年度の実験に7名の被験者を追加して合計14名のデータを得た.夜中の18時間覚醒(午後18時〜午前10時)と日中の6時間睡眠(午前10時〜午後4時)を3日連続で繰り返した.2日目の夜間にのみ光曝露(1000 lux, 4時間)を行い,それ以外の時間はDim light(15 lux)とした.光の急性的な影響として,光曝露中の唾液中メラトニン濃度,脳波,心拍数,直腸温,主観的眠気,反応時間を測定した.概日リズムの位相後退量は,光曝露の前日と翌目の唾液中メラトニン濃度の変動から定量化した.また,光曝露を行った日の昼間の睡眠構築も調べた.昨年度の7名のデータではメラトニンの抑制率と概日リズムの位相後退量の間に相関は認められなかったが,14名のデータを用いてより詳細な分析を行った結果,両者に有意な正の相関が認められた.しかし,メラトニン抑制率の個体差は,光による体温の上昇,覚醒度の上昇,反応時間の向上と有意な相関がなかった.一方で,光による反応時間の変化が,体温の変化量と負の相関があり,眠気と正の相関があった.また,光による位相後退量と昼間の睡眠効率の間に正の相関があり,位相後退が大きい個体ほど,昼間によく眠れていることが明らかとなった.以上の結果より,光による非視覚的作用には個体差が大きく,その協関性は指標によって異なることが示された.コルチゾルや自律神経系の指標についても現在解析を行っている.これらの知見は,人工照明と現代社会の抱えると睡眠・生体リズム障害との関連を生理的に明らかにするための有益なデータと考えられる.
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