2008 Fiscal Year Annual Research Report
都市化社会において食行動の変容によって発現される機能的潜在性に関する研究
Project/Area Number |
18370101
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
中村 晴信 Kobe University, 人間発達環境学研究科, 准教授 (10322140)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 哲也 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (60082989)
川畑 徹朗 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (50134416)
甲田 勝康 近畿大学, 医学部, 准教授 (60273182)
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Keywords | 都市化 / 食行動 / 生理人類学 / 食事制限 / 自律神経機能 |
Research Abstract |
人類は、狩猟採取の時代においは、食料供給を100%自然環境に依存していた。故に、自然環境の変化によっては、飢餓状態に耐えつつ、狩猟により食用となる動物を確保できた時にはそれを体脂肪として蓄積することを繰り返しながら、生存をはかってきた。一方、狩猟採集の時代と異なり、現代は都市化社会という人工環境下にあり、食材も容易に確保できるようになり、その結果、肥満をはじめとする、種々の生活習慣病を招いている。そこで、本年度は、そのような食行動の変容がヒトの生理学的・心理学的側面に与える影響について検討した。 ヒトの食行動の中でも、食事摂取に注目し、朝食において、旧来の飢餓状態を反映していると考えられる絶食、あるいは肥満を生みだす現代食の代表ともいえる高脂肪食摂取、および標準食摂取の3条件を設定し、各々の条件下において、自律神経活動、空腹感、満腹感、食欲、疲労度等の主観的指標、体温、心拍等、生理・心理指標を計測した。 絶食群は高脂肪食や標準食に比べ、副交感神経活動を反映すると考えられる心拍変動のHF成分が上昇し、心拍数が低下していた。さらに、体熱産生を反映する心拍変動のVLF成分および総自律神経活動(Total Power)が上昇していた。高脂肪食群および標準食群では、摂取後から摂食欲求が低下し、満腹感が上昇した。 絶食は、副交感神経活動が亢進していたが、気分や自覚症状において他の2群と差が見られなかったことから、活動性の低下を伴わず、また、抗うつ作用がある可能性が示唆された。さらに、絶食時の総自律神経活動の亢進および副交感神経活動の亢進から、絶食には循環器疾患リスクを低下させる可能性が示唆された。
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