2009 Fiscal Year Annual Research Report
エピジェネティック変異を利用した植物有用成分の量的改変
Project/Area Number |
18380002
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
金澤 章 北海道大学, 大学院・農学研究院, 准教授 (30281794)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
喜多村 啓介 北海道大学, 大学院・農学研究院, 教授 (50111240)
|
Keywords | 植物 / 遺伝子発現 / エピジェネティックス / メチル化 / 転写 |
Research Abstract |
核酸の塩基配列の相同性に基づいて遺伝子の不活性化がおきる現象は、相同性依存型ジーンサイレンシングと呼ばれ、さまざまな生物においてみられる。本研究では、ジーンサイレンシングの誘導および維持に関わる機構を明らかにすること、ならびに、植物ゲノムに存在する遺伝子のサイレンシングを誘導し、その遺伝子産物によって制御される生合成経路上にある物質の量的制御を行うことを目的として研究を行った。第一に、研究代表者が開発した、トランスジーンを標的とした転写不活性化の誘導系において、長さの異なるプロモーター部分配列を挿入したウイルスを植物体に接種した後の異なる時期において、GFP蛍光、GFP mRNA量、ウイルスRNA量、および、siRNA量を比較解析した。この実験により、挿入配列の長さが100bp前後において変化する転写不活性化の効率は、必ずしも産生されるsiRNAの量には関連しないことを明らかにした。また、一続きではない配列であっても、それらの長さを合わせたものが長い場合には高い効率で転写不活性化が起きることを見出した。研究代表者らは、これまでの解析で、このウイルスベクターを用いたサイレンシングによりダイズの種子成分の変化を誘導することに成功しており、その誘導機構を解析した。登熟中のダイズ種子においてウイルスRNAが存在したことから、種子成分に影響を与えるサイレンシングが登熟中の種子で誘導されていることが示唆された。さらに、植物体をエピジェネティックな発現変化に関わる薬剤によって処理することにより、顕著な植物体の形態変化を誘導することに成功し、新たな形質改変の手段として利用できることが示唆された。以上の研究を通して、エピジェネティックな特定の遺伝子を標的とした遺伝子発現変化を誘導すること、ならびに、ランダムに遺伝子発現変化を誘導することの双方が、有用成分が変化した植物系統を作出するための方策として有効であるものと考えられた。これらに加え、変異原処理によって成分変化を見出し、栽培試験を継続して行うことにより、その成分変化が安定に伝達される形質であることを確認した。
|
Research Products
(18 results)