2006 Fiscal Year Annual Research Report
ダイズとVigna属作物との比較ゲノム解析:種特異的QTLの利用
Project/Area Number |
18380009
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
加賀 秋人 独立行政法人農業生物資源研究所, 基盤研究領域ジーンバンク」, 主任研究員 (30391551)
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Keywords | アズキ / ダイズ / ササゲ属 / 栽培化 / マメ科 / 連鎖地図 / QTL / シンテニー |
Research Abstract |
ダイズと極めて近縁なVigna属植物をダイズのマップベースドクローニングのツールおよび新規遺伝子供給源として利用するための第一歩としてVigna属植物間の比較連鎖地図の作成を目的に、ケツルアズキ(Vigna mungo)の連鎖地図を構築した。ケツルアズキの連鎖地図は基本染色体数と一致する11本の連鎖群に収束し、BC1F1集団とF2集団におけるマーカーの順序は概ね一致した。両集団で検出された器官サイズのQTLで、最も作用力が大きいQTLは全て第8連鎖群上部に検出された。その中心には、MOG系統が示す劣性の葉の形態異常遺伝子tc(twist and curly leaf)が存在することから、これらのQTLはMOG遺伝子によるものと考えられる。MOG系統由来遺伝子の遺伝効果は開花期を遅く、胚軸から第3節までの節間長を長く、百粒重を重く、分枝数や一莢内種子数を減らす向きに劣性に作用し、葉を大きく、第4節以上の節間長、葉柄長、莢長および種子長を長くする向きに不完全劣性に作用していた。各QTLの寄与率は、MOG系統のドナーであるBC48系統が栽培化の過程で獲得したと考えられる他の連鎖群のQTLの寄与率よりも極めて大きかった。さらに、ケツルアズキとアズキ(Vigna angularis)では高度のゲノムシンテニーが認められたので、ケツルアズキ/祖先野生種F2集団のQTLをアズキ/祖先野生種F2集団2集団のQTLと比較した。一般に、アズキの種子や葉はケツルアズキよりも大きいが、ケツルアズキ第8連鎖群の器官大型化QTL近傍にはアズキの種子や葉に関するQTLは存在せず、MOG遺伝子はアズキの栽培化には利用されなかったと思われる。一方、第9連鎖群にはケツルアズキとアズキに共通した器官サイズのQTLクラスターが見つかった。両種は独立した栽培化過程を経ているにも関わらず、栽培種が獲得した器官大型化には部分的に共通した遺伝的変異が利用されていたことは興味深い。このほか、種子休眠性や裂莢性に関するQTLは両種で明らかに異なることが明らかとなった。次にダイズとVigna属作物問の比較連鎖地図の構築を目的に、ダイズのEST-SSRマーカー7000種類をダイズでスクリーニングし、約4600種類がシンクルローカスのマーカーとして利用できることを明らかにした。これらについては平成19年度にVigna属作物4種の増幅の可否と栽培-野生種間の遺伝的多型を調査し、連鎖地図への集積を開始する。また、平成19年度に雑種集団を展開する計画のツルアズキに関しては、祖先野生種とのF1雑種に栽培種ツルアズキを花粉親とした戻し交配を行い、BC1F1集団が育成可能な十分量のBC1F1種子を得た。また、平成20年度に雑種集団を展開する計画のリョクトウに関しては、栽培リョクトウとその祖先野生種のF1雑種種子を獲得した。
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