2008 Fiscal Year Annual Research Report
糸状菌生態研究の基盤構築と糸状菌の硝化・脱窒能の解明による窒素循環系の新提案
Project/Area Number |
18380050
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
鮫島 玲子 Shizuoka University, 農学部, 助教 (00377722)
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Keywords | 茶園 / 糸状菌 / 脱窒 / 亜酸化窒素 |
Research Abstract |
供試土壌には窒素を年40kg/10a施肥した対照区と、その3倍の窒素肥料(年120kg/10a)を施肥した3N区の茶園土壌(野菜茶業研究所金谷茶業研究拠点)を用いた。まず圃場におけるN_2O発生を測定したところ、対照区では0.04mgN/m^2/h、3N区では8.27mgN/m^2/h発生していた。次に希釈平板法により各土壌の糸状菌を計数した。培地にはクロラムフェニコールと5mMのNaNO_3を添加したローズベンガル培地のpH4.5とpH6.8の2種類を用い、好気培養とアネロパック・ケンキ(三菱ガス化学)を用いた嫌気培養を行った。好気培養・嫌気培養いずれにおいても対照区のほうが3N区よりも3.4〜23倍高い糸状菌数を示した。培地pHは6.8よりも4.5で計数値が下がる傾向にあった。また、嫌気培養より好気培養の計数値が4.8〜168倍高い値を示した。 次に、計数を行った平板より各分離方法につき10株、計80株の糸状菌を単離しN_2O発生能を調査した。3N区の嫌気培養単離株はすべてN_2O発生能を示さなかったが、好気培養分離株は半分以上の株が高いN_2O発生能を示した。また供試菌株はPenicillium属、Hypocrea属、Trichoderma属、Ophiostoma属、Sporothrix属に近縁であることがわかった。しかし、供試菌株の脱窒能と糸状菌の系統の間に規則性がみられなかった。この結果から同種または同属の菌株同士で脱窒能が異なることが示された。したがって同種の糸状菌の中でN_2O発生に関わる菌株とそうでない菌株が存在することが考えられる。同属、同種間で脱窒能の差異が大きい種と小さい種または差異のない種が存在するのかもしれない。 今後、糸状菌脱窒能の多様性を生む遺伝的背景の解明が望まれる。
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Research Products
(3 results)