2008 Fiscal Year Annual Research Report
森林生態系における大型植食者による生物多様性維持機構の実験的解明
Project/Area Number |
18380086
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
揚妻 直樹 Hokkaido University, 北方生物圏フィールド科学センター, 准教授 (60285690)
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Keywords | 大型植食動物 / 採食圧 / 植物生産性 / 生物間相互作用 / 森林生態系 / 生産者 / 消費者 / 分解者 |
Research Abstract |
一般に植食者が植物種多様性に与える影響は、生産性が低い条件下では多様性を減少させ、逆に高い条件下では増加させることが多くの生態系で確認されている。しかし、森林生態系において大型植食者が同様の機能を果たしているかについては大規模な野外操作実験が困難なため検証されてこなかった。そこで本研究では植物生産性とシカ密度が林床植物や土壌生物に与える影響を検証するために森林内で大規模な野外操作実験を行った。シカ密度は3段階(高・低・排除)に設定した。生産性の操作は高木の伐採(光条件向上)と施肥(土壌栄養添加)を行い、3つのシカ密度毎に4つの処理区(無処理、伐採、施肥、伐採・施肥)を設置した。そして林床植物の食害率、出現種数、多様度指数、被度を調査した。食害率は無処理区に比べ施肥区では変わらなかったが、伐採区で増加した。林床植物のバイオマスは伐採区と伐採・施肥区で増加しており、光条件の向上に伴い林床植物被度が増加することで、シカ利用頻度が増加したため、植食圧が強まったと考えられた。一方、林床植物の種数に対しては、施肥や伐採処理の効果は見られたが、シカ密度間に有意な差はなかった。これは、調査対象種の全てが多年生植物であるため地上部の採食だけでは、個体の消滅にはすぐにはつながらず、シカの植食圧が種数を数年で変化させる程ではなかったと考えられた。以上から、数年間の実験においては林床植物の多様性は植物生産性により変化するものの、シカの採食の影響はそれほど大きいものではないことが示された。シカが分解系に及ばす影響については、リター分解の促進や微生物(バクテリア・真菌類)の多様性の向上などが示唆された。
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Research Products
(6 results)