Research Abstract |
本研究は,森林流域の水質浄化に関わる生態系機能の解明と評価手法を確立することを目的とする.本研究は,第一段階として,我が国で行われてきた森林流域における渓流水質に関わる研究をできるだけ網羅的にレビューし,森林の「水質浄化機能」の実態把握を行い,機能の再定義,すなわち現時点での森林が持つ水質浄化機能の可能性と限界を整理した. つぎに,安定同位体や遺伝子情報に基づく微生物生態学的な手法など先端的な方法を用いて森林小流域における野外観測を行うため,植生,流域面積の異なる3つの観測・実験流域(桐生試験流域,不動寺試験流域,十津川試験流域)を設定して,水質項目と森林生態系の水・物質循環の状態との因果関係を明らかにする調査を行った.観測項目は,水文過程(降水量,渓流水量,地下水位,土壌水分量,地温,水温)原位置測定による水質(pH,電気伝導度,溶存CO2濃度)である.上記水文過程における水試料を採取し,試料採取の上,実験室で測定する水質項目は,無機イオン濃度,溶存有機態・無機態炭素濃度(本年度導入の「湿潤酸化式全炭素分析計」を用いる)等,水の安定同位体比,溶存NO3-の窒素・酸素同位体比,溶存有機態炭素の炭素安定同位体比であった. 土壌中,地下水中の窒素循環の機構と,流出NO3-の起源推定のために,脱窒菌法を用いたNO3-の安定同位体比の測定を行った.脱窒菌法によるNO3-の窒素・酸素安定同位体比の同時測定法は,代表者の大手がH16-18の期間で,こうした調査への適用するための方法論の整備を進めていた.溶存有機態炭素(DOC)の炭素安定同位体比の情報は,流域から流出する有機物の起源,特徴を示す重要な情報である.これを測定するために,この研究経費で購入する全炭素分析計を用い,水試料中の有機態炭素をCO2として捕集,精製する機材(精製ライン)を構築した.
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