2006 Fiscal Year Annual Research Report
沿岸海域における陸域起源有機物の挙動と資源生物生産に対する役割の解明
Project/Area Number |
18380115
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山下 洋 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 教授 (60346038)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠井 亮秀 京都大学, 農学研究科, 助教授 (80263127)
上野 正博 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助手 (30160196)
吉永 郁生 京都大学, 農学研究科, 助手 (40230776)
富永 修 福井県立大学, 生物資源学部, 助教授 (90264689)
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Keywords | 陸域起源有機物 / 栄養塩 / 由良川 / 河口域 / 小浜湾 / 安定同位体比 / 食物網 |
Research Abstract |
由良川-由良海水系において、由良川が供給する有機物と栄養塩に関する詳細な調査を行った。炭素・窒素の安定同位体比とC/N比から推定された懸濁態有機物の起源は、上流域では基盤から脱落した付着藻類、中流域ではダム湖を中心として発生した植物プランクトン、感潮域までの下流域では人間活動に由来する物質であることが明らかになった。栄養塩濃度も人口密度が増大する下流域で急激に増加し、有機物供給の結果と一致した。由良川河口から上流20kmまでの感潮域では、潮汐がきわめて小さくしかも河床勾配の小さい西部日本海特有の淡水-海水交換機構の存在が明らかになった。降雨量の多い冬春季には淡水が卓越するが、夏秋期には間欠的に海水が浸入し低酸素嫌気的環境が形成されやすいことがわかった。夏秋期には淡水との境界下層付近にクロロフィル極大層が形成され、海産植物プランクトンによる基礎生産が卓越する可能性が示唆された。 小浜湾および由良海では、ともに河口から沖合へ離れるにつれて海底有機物の炭素安定同位体比が増加し、陸域起源有機物の割合が減少した。由良川、北川・南川の両河口域では、堆積有機物、懸濁態有機物ともにその主体が陸域起源有機物であることが示された。河口域に分布する動物のうち、イトゴカイ科やウミイサゴムシ科多毛類の炭素安定同位体比(-22.5〜-21.4‰)はクルマエビ類、カイアシ類、アミ類、貝類、魚類など(-19〜-15‰)に比べて陸域起源懸濁態有機物(-27〜-29‰)に近い値を示した。また、多毛類を主食とするスジハゼでは、他の魚類よりも低い炭素安定同位体比(-18.0‰)が得られており、多毛類食の影響が認められた。しかし、多毛類やスジハゼでも、河口から離れるに従って炭素安定同位体比が増加した。これらの調査結果は、陸域由来有機物が食物網を通して沿岸海洋生物にも利用されている実態の一端を示した。
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