2008 Fiscal Year Annual Research Report
ベトナム農業・農村の構造変動と関連機関の役割に関する実証的研究
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18380131
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
泉田 洋一 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (10125809)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
須田 敏彦 大東文化大学, 国際関係学部, 准教授 (00407652)
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Keywords | ベトナム / 農業構造 / 土地問題 / 農村金融 / 兼業化 / メコンデルタ / 紅河デルタ / 稲作 |
Research Abstract |
この年度では、主に二つの作業を行った。ひとつは今までの分析を学会で報告し、また学術雑誌に投稿することである。これは前年度の後半から進めているが、更に新しい分析を試み、新規の論文執筆も行った。農業経済関係の学会誌に3本を掲載したことが成果である。また、平成20年度末には学会発表および国際学術誌への投稿を試みた。 もう一つの作業は、更なる補足調査である。特に南部メコンデルタでは売買や貸借による土地の移動が予想以上に活発で、これが農業生産構造に大きな影響を与えている。また土地の移動は信用を媒介にして行われるケースが多く、金融と土地移動の関連も見逃せない。更に2008年には春先に米価が高騰し、稲作生産や農家の所得に大きな影響を与えている。そこで物価騰貴の所得への影響を把握するための調査票を作成し、農家聞き取りに備えた。 9月に予備調査、10月はじめに本格的な補足調査を行った。予備調査の結果、アンザン省の農村における労働力不足が深刻化しつつあることが判明した。そのことを踏まえて、調査票には、農業機械化や委託作業の状況等、労働力不足への対応を聞き取る項目を追加している。 この予備調査と補足調査による研究成果は以下の通りである。メコンデルタでは労働過剰経済から労働不足経済への転換過程にある。稲作の機械化が進展しつつあり、作業の受委託も活発化しつつある。土地については売買がきわめて頻繁になされ、規模の二極化が進みつつあると判断される。土地無し層も生じているが、特に土地無し貧困層が出現して社会問題化しているとはいえない。農村家計については、所得水準の高まり、所得源泉の多様化、兼業化もみられるが、稲作農家はむしろ専業化の度合いを強めている。規模を拡大した専業農家が今後のメコンデルタ稲作を担うことになる。
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