Research Abstract |
トラクタにけん引されるトレーラは,旋回時に内輪差による巻き込みが問題となる。農業生産に於いては,内輪差により小回りが効かないことも,作業の効率性を低下させる要因となる。そこで,ヒッチ点の位置を制御することでこうした問題を解決する新たな考え方を提案した。従来,トレーラの車輪を操舵することで問題を解決する方法が提案されてきたが,この場合にはトレーラの改造が必要となった。本論文で提案されたヒッチ点移動の場合には,トレーラ側の改造は必要なく,トラクタにヒッチ点の移動機構を導入することのみで,追従性を改善し,内輪差を最小化できる。 本年度は,従来から蓄積してきた理論的研究の深化させ,ヒッチ点移動の考え方,制御の理論のとりまとめを行った。そして,コンピュータシミュレーションと実機を使用した旋回試験により,ヒッチ点制御の性能確認を行った。シミュレーションの結果,従来提案されていたトレーラ車輪操舵方式に比べて,ヒッチ点位置制御では,内輪差が小さな角度で生じ始めるが,内輪差の増加速度も小さくなった。その結果,トレーラが不安定になる操舵角度は,ヒッチ点位置制御の方が車輪操舵方式よりも大きくなった。実験の範囲では,トラクタ軸距と,トレーラヒッチ点から車軸中心までの比が1.22〜1.35まででは,操舵角度が35°になるまで内輪差は生じなかった。 さらに,堆肥散布機にこの制御法を導入して,旋回半径の減少,内輪差の減少が可能であることを確認した。 続いて,従来は一方向の旋回において内輪差を減少できたのに対して,両方向とも応用できる2号機を製作するとともに,圃場でもトラクタの12Vバッテリだけで駆動できる制御装置の開発に向けて準備を行った。
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